彼の隣、彼女の隣 4
ヒロイン
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反神羅組織の再調査は、本日とりあえず一区切りとなった。あとは調査結果をもとに、軍の作戦司令部で計画を立てるとのことだった。
「ご苦労だったな。レノ、明日は休んでいいぞ」
疲れ切って椅子の背もたれに身体を預けて目を閉じていたレノは、『休んでいい』というツォンの言葉に反応して目を開けた。
1ヶ月ぶりの休暇。
それを認識すると、どっと疲れが身体にのしかかってきた。
「作戦、実行日決まったら連絡くださいよ、と」
明日どころか、作戦日まで休んでもバチは当たらないだろう。
暗にそれをほのめかし、レノは神羅ビルを出た。
外は当たり前のように日が沈んでいた。
レノは携帯を出して時間を確認する。
金曜、19時。繁華街が賑わう頃だ。
いつもなら飲みに行くところだが、さすがにそんな気力もなかった。
(帰って寝るか…)
今から帰れば、のんびりしても20時前には家に着くだろう。
そこまで考えて、レノははっとした。
この時間なら、ヒロインに会えるのではないか。
レノは慌てて私用の携帯を取り出すと、ヒロインの携帯に電話を掛けた。
1コール、2コール…いくら待ってもヒロインは出ない。
(金曜だしな…)
どこかに飲みに行ったか。
レノは電話を切った。
どうやら、自分とヒロインはとことん縁がないらしい。
繋がっていた細い細い糸が切れた。いや、そもそも繋がっていなかったのかもしれない。
私用携帯の電源を落とすと、レノは帰宅するのをやめて、繁華街に繰り出した。
レノが退社する2時間前、神羅ビル地下サーバルーム。
ヒロインは、サーバラックの前で立ち尽くしていた。
横で同僚が必死に謝っているが、謝罪の言葉は全く耳に入ってこなかった。
完全に通信がダウンした機器を前に、ヒロインは目の前が真っ暗になるのを感じた。
本日の作業は、古い機器の撤去だけのはずだった。
業務時間後に電源を抜き、サーバラックから撤去する。ただそれだけのはずが、事もあろうに同僚は業務時間中に、違う機器の電源を落としたのだった。
「ヒロイン、ごめん…どうしよう…」
今にも泣き出しそうな同僚をなだめ、ヒロインは関係各所に現在の状況を報告し、復旧の段取りを整えた。
唯一幸いだったのは、障害の影響が小さかったことだった。
泣くばかりで全く役に立たない同僚に苛立ちつつも、ヒロインは黙々と復旧作業をこなした。
最終確認まで終え、仕事から解放されたのは、深夜1時を回った頃だった。
ヒロインは神羅ビルの前のタクシー乗り場に並ぶ。列に並んでいるのは、酔っぱらいと仕事上がりの人が半々ぐらいだった。
(あー…今日は映画見たかったんだけどな…)
映画館で見逃して、初放送を楽しみにしていた映画だった。まさかこんなことになるとは思わず、録画もしてこなかった。
ヒロインは一縷の望みを掛け、動画配信サービスで映画が配信されていないか確かめることにした。
そのとき、ようやく自分の携帯に着信があったことに気づく。
「レノ、さん…?」
登録していないが、すぐに誰の番号かわかった。
着信は数時間前だ。
ヒロインは時間を考え、掛け直すか迷った。しかし、今を逃せば、次の機会がないこともなんとなく感じていた。
一つ、二つ、深呼吸して、ヒロインは電話をかけ直した。
『電源が入っていないか――』
聞こえてきたのは、無情な知らせだった。
心がぎゅっと締め付けられるようだった。自然と涙が滲んでくる。
いつもなら、家にいる時間。
いつもどおりだったなら、話ができたのに。
どうしてこうも間が悪いのだろう。
偶然、隣に住んでいただけの儚い繋がりが、ぷつりと切れた。
ヒロインは通話を切ると、携帯を鞄に押し込んで、タクシーに乗り込んだ。
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「ご苦労だったな。レノ、明日は休んでいいぞ」
疲れ切って椅子の背もたれに身体を預けて目を閉じていたレノは、『休んでいい』というツォンの言葉に反応して目を開けた。
1ヶ月ぶりの休暇。
それを認識すると、どっと疲れが身体にのしかかってきた。
「作戦、実行日決まったら連絡くださいよ、と」
明日どころか、作戦日まで休んでもバチは当たらないだろう。
暗にそれをほのめかし、レノは神羅ビルを出た。
外は当たり前のように日が沈んでいた。
レノは携帯を出して時間を確認する。
金曜、19時。繁華街が賑わう頃だ。
いつもなら飲みに行くところだが、さすがにそんな気力もなかった。
(帰って寝るか…)
今から帰れば、のんびりしても20時前には家に着くだろう。
そこまで考えて、レノははっとした。
この時間なら、ヒロインに会えるのではないか。
レノは慌てて私用の携帯を取り出すと、ヒロインの携帯に電話を掛けた。
1コール、2コール…いくら待ってもヒロインは出ない。
(金曜だしな…)
どこかに飲みに行ったか。
レノは電話を切った。
どうやら、自分とヒロインはとことん縁がないらしい。
繋がっていた細い細い糸が切れた。いや、そもそも繋がっていなかったのかもしれない。
私用携帯の電源を落とすと、レノは帰宅するのをやめて、繁華街に繰り出した。
レノが退社する2時間前、神羅ビル地下サーバルーム。
ヒロインは、サーバラックの前で立ち尽くしていた。
横で同僚が必死に謝っているが、謝罪の言葉は全く耳に入ってこなかった。
完全に通信がダウンした機器を前に、ヒロインは目の前が真っ暗になるのを感じた。
本日の作業は、古い機器の撤去だけのはずだった。
業務時間後に電源を抜き、サーバラックから撤去する。ただそれだけのはずが、事もあろうに同僚は業務時間中に、違う機器の電源を落としたのだった。
「ヒロイン、ごめん…どうしよう…」
今にも泣き出しそうな同僚をなだめ、ヒロインは関係各所に現在の状況を報告し、復旧の段取りを整えた。
唯一幸いだったのは、障害の影響が小さかったことだった。
泣くばかりで全く役に立たない同僚に苛立ちつつも、ヒロインは黙々と復旧作業をこなした。
最終確認まで終え、仕事から解放されたのは、深夜1時を回った頃だった。
ヒロインは神羅ビルの前のタクシー乗り場に並ぶ。列に並んでいるのは、酔っぱらいと仕事上がりの人が半々ぐらいだった。
(あー…今日は映画見たかったんだけどな…)
映画館で見逃して、初放送を楽しみにしていた映画だった。まさかこんなことになるとは思わず、録画もしてこなかった。
ヒロインは一縷の望みを掛け、動画配信サービスで映画が配信されていないか確かめることにした。
そのとき、ようやく自分の携帯に着信があったことに気づく。
「レノ、さん…?」
登録していないが、すぐに誰の番号かわかった。
着信は数時間前だ。
ヒロインは時間を考え、掛け直すか迷った。しかし、今を逃せば、次の機会がないこともなんとなく感じていた。
一つ、二つ、深呼吸して、ヒロインは電話をかけ直した。
『電源が入っていないか――』
聞こえてきたのは、無情な知らせだった。
心がぎゅっと締め付けられるようだった。自然と涙が滲んでくる。
いつもなら、家にいる時間。
いつもどおりだったなら、話ができたのに。
どうしてこうも間が悪いのだろう。
偶然、隣に住んでいただけの儚い繋がりが、ぷつりと切れた。
ヒロインは通話を切ると、携帯を鞄に押し込んで、タクシーに乗り込んだ。
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