彼の隣、彼女の隣 4
ヒロイン
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『ケーキありがとうございました』
『これ、すっごく美味しかったです』
『お仕事、頑張ってくださいね』
チャットアプリに表示される、メッセージとケーキの写真。
レノはそれを見返して、大きな溜息をついた。
チャットのタイムスタンプは1ヶ月前。
そのメッセージに返信して以来、一度もやり取りはない。
作戦失敗のフォローと立て直し、再調査…諸々の仕事のせいで休みはなし。徹夜あり。もう2週間以上、家に帰っていない。
ヒロインは仕事の忙しさを察して遠慮してか、一度も電話もメッセージを送ってくることもなかった。
レノはもちろんメッセージを送ろうとしたが、手が空くのはいつも深夜。ヒロインを起こすのではないかと思い、そんな時間にメッセージを送るのははばかられた。
そうこうしているうちに1ヶ月。
ただの隣人のことを忘れるには十分な時間だ。ケーキを買って行くと言う約束は、もう有効期限切れかもしれない。
レノはチャットアプリを閉じた。
翌昼前、仮眠明けのレノはリフレッシュフロアでコーヒーを飲んでいた。
偶然ヒロインに会えたら、という期待もあったが、そう上手い話があるはずもなかった。
「レノ、やっと会えた!」
腰を上げようとしたとき、幾人かの派手な女性たちがやってきた。
そのうちのリーダー格と思われる女性が、にこりと微笑んだ。どうすれば男を落とせるかわかっている顔だ。
よくよく見れば、1ヶ月前にヒロインに詰め寄っていた奴らだった。
あの日、レノはヒロインに電話した後、リフレッシュフロアの監視映像を確認していた。大勢で寄ってたかって一人をいじめる卑怯なやり方は、今思い出しても腹が立つ。
その時点で制裁を加えなかったのは、蒸し返すことで、余計にヒロインに迷惑がかかると思ったからだった。
だから、レノも忘れようとしていたのだが、加害者の方からやってくるとは。
「ずっと謝ろうと思ってたの。レノの後輩に、ひどいことを言ってしまって…」
殊勝な顔を作っているが、言葉に一切気持ちがこもっていない。
レノは聞こえるように舌打ちした。
「オレに謝ってどうすんだよ」
低く抑えた声を出すと、女性たちの顔が恐怖で引きつった。
何か言い訳しようと、女性が口を開く前に、レノは一息に言い放った。
「お前らとこうしてる時間が一番無駄なんだよ。二度と顔見せんな」
レノは立ち上がると、女性たちを一瞥することもなく、リフレッシュフロアを後にした。
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『これ、すっごく美味しかったです』
『お仕事、頑張ってくださいね』
チャットアプリに表示される、メッセージとケーキの写真。
レノはそれを見返して、大きな溜息をついた。
チャットのタイムスタンプは1ヶ月前。
そのメッセージに返信して以来、一度もやり取りはない。
作戦失敗のフォローと立て直し、再調査…諸々の仕事のせいで休みはなし。徹夜あり。もう2週間以上、家に帰っていない。
ヒロインは仕事の忙しさを察して遠慮してか、一度も電話もメッセージを送ってくることもなかった。
レノはもちろんメッセージを送ろうとしたが、手が空くのはいつも深夜。ヒロインを起こすのではないかと思い、そんな時間にメッセージを送るのははばかられた。
そうこうしているうちに1ヶ月。
ただの隣人のことを忘れるには十分な時間だ。ケーキを買って行くと言う約束は、もう有効期限切れかもしれない。
レノはチャットアプリを閉じた。
翌昼前、仮眠明けのレノはリフレッシュフロアでコーヒーを飲んでいた。
偶然ヒロインに会えたら、という期待もあったが、そう上手い話があるはずもなかった。
「レノ、やっと会えた!」
腰を上げようとしたとき、幾人かの派手な女性たちがやってきた。
そのうちのリーダー格と思われる女性が、にこりと微笑んだ。どうすれば男を落とせるかわかっている顔だ。
よくよく見れば、1ヶ月前にヒロインに詰め寄っていた奴らだった。
あの日、レノはヒロインに電話した後、リフレッシュフロアの監視映像を確認していた。大勢で寄ってたかって一人をいじめる卑怯なやり方は、今思い出しても腹が立つ。
その時点で制裁を加えなかったのは、蒸し返すことで、余計にヒロインに迷惑がかかると思ったからだった。
だから、レノも忘れようとしていたのだが、加害者の方からやってくるとは。
「ずっと謝ろうと思ってたの。レノの後輩に、ひどいことを言ってしまって…」
殊勝な顔を作っているが、言葉に一切気持ちがこもっていない。
レノは聞こえるように舌打ちした。
「オレに謝ってどうすんだよ」
低く抑えた声を出すと、女性たちの顔が恐怖で引きつった。
何か言い訳しようと、女性が口を開く前に、レノは一息に言い放った。
「お前らとこうしてる時間が一番無駄なんだよ。二度と顔見せんな」
レノは立ち上がると、女性たちを一瞥することもなく、リフレッシュフロアを後にした。
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