彼の隣、彼女の隣 2
ヒロイン
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神羅ビル地下、サーバルーム。
ヒロインは暗い気持ちで午後の業務をこなしていた。
考えるのは今日の昼と、明日の昼のこと。
レノに会わなければ、今日の昼のようなことは起こらなかったのか。
でも、昨日会わなければ、きっともっとひどいことが起きていた。
明日、レノに会ったらどうなるだろう。
きっとまた、今日みたいなことが起こるだろう。
「明日…会いたくない、な…」
しかし、助けてくれたお礼はしたい。
レノが食事を望んでいるのなら、それに応えなければならない。
ヒロインは大きく溜息をついた。
「ヒロインさん、チェックお願いします」
一緒に作業をしていた同僚に呼ばれ、ヒロインははっとして顔を上げた。
「すみません!すぐに確認します」
ヒロインは一旦思考を打ち切り、仕事に集中した。
予定していたサーバルームでの作業が終わり、ヒロインは施錠を確認し、サーバルームを出た。
オフィスに戻るのが憂鬱だった。
また、あの昼に一緒にいた同僚と顔を合わせなければならない。
ヒロインはいつもより遠回りして、オフィスに戻ることにした。
「ヒロイン、あんたの携帯、さっきからめちゃくちゃ鳴ってたよ。名前出てなかったらからイタ電だろうけど」
「…すみません」
サーバルームへの電子機器類の持ち込みは禁止のため、社用も私用の携帯もオフィスに置いたままにしていた。
ディスプレイは伏せていたはずだが、見られたのだろうか。
(もう最悪…)
すぐに定時になったので、ヒロインは逃げるようにオフィスを出た。
神羅ビルを出たところで、私用携帯の不在着信を確認した。
5分ごとの不在着信が10件履歴に残っている。
同僚が言うように、発信者の名前は表示されていない。
(誰だろう…)
ヒロインは履歴からその番号に電話をかけ直してみた。
1コール、2コール目が鳴る寸前、スピーカーから声が飛び出した。
『ヒロインか!?』
ヒロインの心臓が大きく脈を打った。
「レ、レノさん…」
誰に聞かれているともわからない。ヒロインは警戒して声をひそめた。そして、メインエントランスから伸びる道から少し外れた人気のない場所に移動した。
「あの、何か、ありましたか?」
レノはきっと昼の騒動を同僚から聞いたことだろう。
ランチ中止の連絡だったらいいのに。レノから切り出されたら、仕方ないと自分に言い聞かせられる。
『明日のランチのことなんだけどな』
あぁ、よかった。中止だ。
ヒロインはほっと胸を撫で下ろした。
『土曜日、家で、じゃダメか?』
「え?」
『今日の昼、オレの不注意で迷惑掛けたって後輩から聞いてよ。家なら、安心かと思って…って、ヒロインからしたら安心じゃないのか…?』
電話の向こうで考え込むレノを想像し、ヒロインはくすりと笑った。
「いえ、大丈夫です。会社だと、目立つだろうから…お気遣いありがとうございます」
ヒロインにはレノの気遣いが本当にうれしかった。見た目は派手だが、些細なやり取りでも心の優しい人だとよくわかる。だから、『家で』と提案されても、嫌な気はしなかった。
「はい、じゃあ土曜日に。お昼作って待ってますね」
電話を切る寸前、『ツォンさん、オレ土曜休みにすっから!任務なしで頼むぞ、と』と休暇交渉をしているレノの声が聞こえ、ヒロインは少し声を出して笑った。
暗く冷え切った心が、暖かな光で解けていくのを感じた。
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ヒロインは暗い気持ちで午後の業務をこなしていた。
考えるのは今日の昼と、明日の昼のこと。
レノに会わなければ、今日の昼のようなことは起こらなかったのか。
でも、昨日会わなければ、きっともっとひどいことが起きていた。
明日、レノに会ったらどうなるだろう。
きっとまた、今日みたいなことが起こるだろう。
「明日…会いたくない、な…」
しかし、助けてくれたお礼はしたい。
レノが食事を望んでいるのなら、それに応えなければならない。
ヒロインは大きく溜息をついた。
「ヒロインさん、チェックお願いします」
一緒に作業をしていた同僚に呼ばれ、ヒロインははっとして顔を上げた。
「すみません!すぐに確認します」
ヒロインは一旦思考を打ち切り、仕事に集中した。
予定していたサーバルームでの作業が終わり、ヒロインは施錠を確認し、サーバルームを出た。
オフィスに戻るのが憂鬱だった。
また、あの昼に一緒にいた同僚と顔を合わせなければならない。
ヒロインはいつもより遠回りして、オフィスに戻ることにした。
「ヒロイン、あんたの携帯、さっきからめちゃくちゃ鳴ってたよ。名前出てなかったらからイタ電だろうけど」
「…すみません」
サーバルームへの電子機器類の持ち込みは禁止のため、社用も私用の携帯もオフィスに置いたままにしていた。
ディスプレイは伏せていたはずだが、見られたのだろうか。
(もう最悪…)
すぐに定時になったので、ヒロインは逃げるようにオフィスを出た。
神羅ビルを出たところで、私用携帯の不在着信を確認した。
5分ごとの不在着信が10件履歴に残っている。
同僚が言うように、発信者の名前は表示されていない。
(誰だろう…)
ヒロインは履歴からその番号に電話をかけ直してみた。
1コール、2コール目が鳴る寸前、スピーカーから声が飛び出した。
『ヒロインか!?』
ヒロインの心臓が大きく脈を打った。
「レ、レノさん…」
誰に聞かれているともわからない。ヒロインは警戒して声をひそめた。そして、メインエントランスから伸びる道から少し外れた人気のない場所に移動した。
「あの、何か、ありましたか?」
レノはきっと昼の騒動を同僚から聞いたことだろう。
ランチ中止の連絡だったらいいのに。レノから切り出されたら、仕方ないと自分に言い聞かせられる。
『明日のランチのことなんだけどな』
あぁ、よかった。中止だ。
ヒロインはほっと胸を撫で下ろした。
『土曜日、家で、じゃダメか?』
「え?」
『今日の昼、オレの不注意で迷惑掛けたって後輩から聞いてよ。家なら、安心かと思って…って、ヒロインからしたら安心じゃないのか…?』
電話の向こうで考え込むレノを想像し、ヒロインはくすりと笑った。
「いえ、大丈夫です。会社だと、目立つだろうから…お気遣いありがとうございます」
ヒロインにはレノの気遣いが本当にうれしかった。見た目は派手だが、些細なやり取りでも心の優しい人だとよくわかる。だから、『家で』と提案されても、嫌な気はしなかった。
「はい、じゃあ土曜日に。お昼作って待ってますね」
電話を切る寸前、『ツォンさん、オレ土曜休みにすっから!任務なしで頼むぞ、と』と休暇交渉をしているレノの声が聞こえ、ヒロインは少し声を出して笑った。
暗く冷え切った心が、暖かな光で解けていくのを感じた。
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