仮面の女 -Imitation Actress-
ヒロイン
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翌日、レノは街外れの劇場にヒロインを迎えに行った。
着替え中だとまずいと思い、レノは劇場奥の扉をノックした。
「どうぞー」
ヒロインは鏡の前に座り、化粧をしているところだった。
鏡に映る彼女は舞台女優の『レイン』ではなく、復帰した女優の『レイン』の顔になっていた。
「さすがだな」
「『レイン』をベースに、動画の彼女の顔を混ぜてみたんですけど、先輩がそう言うなら問題なさそうですね」
ヒロインが動画の中の『レイン』のように笑った。
昨日、見せてくれと意地悪でねだったその顔。拳を振り上げて、できないと言ったその顔。
その顔を見せることは、ヒロインの本意ではないようにレノには思えた。やや捨て鉢気味に見える。
「ヒロイン、無理すんなよ」
「無理でもしないと、この顔で人前に出られませんよ」
『レイン』ではない『レイン』。
もうすぐ、偽物が本物にすり替わる。
『レイン』がいなくなってしまう。
(ああ、それが嫌なのか…)
『レイン』はヒロインの人生の一部だ。
それが今日、他人に奪われる。
そして、そのための舞台に上がるのは他でもない、『レイン』自身。
とても平静ではいられないだろう。
かくいうレノも、『レイン』が消えることに葛藤を覚えていた。
あの舞台でヒロインに心奪われた思い出が汚されていくようで。
「なぁ、ヒロイン、面白いこと思いついたぞ、と」
レノの提案にヒロインの目が丸くなる。
「いいアイディアだろ?」
レノはにやりと笑った。
「『レイン』最後の舞台を特等席で見せてくれよ、ヒロイン」
ヒロインは自分の顔を真っ直ぐ見た。
映っているのは、偽物の『レイン』。
本物が舞台に上がるのは、これが最後。
「先輩」
鏡越しに、ヒロインが真っ直ぐレノを見た。その目にはいつもの力強い光が宿っていた。
「最後まで『レイン』を演じさせてください」
「あぁ」
.
着替え中だとまずいと思い、レノは劇場奥の扉をノックした。
「どうぞー」
ヒロインは鏡の前に座り、化粧をしているところだった。
鏡に映る彼女は舞台女優の『レイン』ではなく、復帰した女優の『レイン』の顔になっていた。
「さすがだな」
「『レイン』をベースに、動画の彼女の顔を混ぜてみたんですけど、先輩がそう言うなら問題なさそうですね」
ヒロインが動画の中の『レイン』のように笑った。
昨日、見せてくれと意地悪でねだったその顔。拳を振り上げて、できないと言ったその顔。
その顔を見せることは、ヒロインの本意ではないようにレノには思えた。やや捨て鉢気味に見える。
「ヒロイン、無理すんなよ」
「無理でもしないと、この顔で人前に出られませんよ」
『レイン』ではない『レイン』。
もうすぐ、偽物が本物にすり替わる。
『レイン』がいなくなってしまう。
(ああ、それが嫌なのか…)
『レイン』はヒロインの人生の一部だ。
それが今日、他人に奪われる。
そして、そのための舞台に上がるのは他でもない、『レイン』自身。
とても平静ではいられないだろう。
かくいうレノも、『レイン』が消えることに葛藤を覚えていた。
あの舞台でヒロインに心奪われた思い出が汚されていくようで。
「なぁ、ヒロイン、面白いこと思いついたぞ、と」
レノの提案にヒロインの目が丸くなる。
「いいアイディアだろ?」
レノはにやりと笑った。
「『レイン』最後の舞台を特等席で見せてくれよ、ヒロイン」
ヒロインは自分の顔を真っ直ぐ見た。
映っているのは、偽物の『レイン』。
本物が舞台に上がるのは、これが最後。
「先輩」
鏡越しに、ヒロインが真っ直ぐレノを見た。その目にはいつもの力強い光が宿っていた。
「最後まで『レイン』を演じさせてください」
「あぁ」
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