仮面の女 -Imitation Actress-
ヒロイン
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「何を遊んでいるんだ、お前たちは…」
背後からツォンの呆れ声がかかる。
ヒロインがきまり悪そうに振り上げた拳を下ろした。
「ヒロイン、仕事だ――あぁ、それを見たなら話は早いな」
ツォンの視線は、レノの持つタブレットに向けられている。
ヒロインは思い切り顔をしかめた。
「無理です。嫌です」
レノもヒロインに命じられる仕事の内容を察した。
ツォンはヒロインを『レイン』に変装させる気だろう。
変装も何も、そこにいるのは『レイン』本人なのだが。レノは笑いを噛み殺すので精一杯だった。
「レノに女装させるわけにいかないだろう…」
「いや、いけます。私が立派な女性にします!」
突然話が自分に向き、レノは素っ頓狂な声を上げた。
「ばっ、俺は絶対しないぞ、と!」
「先輩ならいけます!私の腕、知ってるでしょ!?」
ヒロインは必死にまくしたてたが、それぐらいでツォンの決定が覆るわけもなく、「行ってこい」の一言で話は終了した。
ツォンはファイルをヒロインに手渡すと、そのままオフィスを出ていった。その背中をヒロインが絶望的な面持ちで見送っていた。
「じゃ、偽物の顔でも拝みに行きますか。な、『レイン』?」
レノはおどけた口調で呼ぶなと言われた名を呼んだが、ヒロインは険しい表情のまま何も言わなかった。
車に乗っても、ヒロインは無言だった。いつもは助手席に座るくせに、今日は拗ねた子供のように膨れ面で後部座席で膝を抱えて丸くなっていた。
「なーんでそんなご機嫌斜めなんだ?」
レノはバックミラー越しにヒロインを見る。一瞬目が合ったが、ヒロインの方から視線を逸した。
はぁ…と、レノは大きく溜息をついた。
こんなに機嫌が悪いヒロインは初めてだった。
「ファイル、目通しとけよ」
何を言っても無駄と判断し、レノはヒロインにファイルを投げると運転に集中しようと前に視線を向けた。
「…見ましたよ。殺害予告でしょ」
ヒロインはつまらなそうに言った。
「脅しには屈しないから、『レイン』の復活会見は開く。でも大事な『レイン』は会見には出さない」
バックミラーには、皮肉たっぷりの笑みを浮かべたヒロインがいた。
「大事な大事な『レイン』…あぁ、あのときしっかり…」
徐々にか細くなっていった声。最後の言葉は聞き取れなかった。
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背後からツォンの呆れ声がかかる。
ヒロインがきまり悪そうに振り上げた拳を下ろした。
「ヒロイン、仕事だ――あぁ、それを見たなら話は早いな」
ツォンの視線は、レノの持つタブレットに向けられている。
ヒロインは思い切り顔をしかめた。
「無理です。嫌です」
レノもヒロインに命じられる仕事の内容を察した。
ツォンはヒロインを『レイン』に変装させる気だろう。
変装も何も、そこにいるのは『レイン』本人なのだが。レノは笑いを噛み殺すので精一杯だった。
「レノに女装させるわけにいかないだろう…」
「いや、いけます。私が立派な女性にします!」
突然話が自分に向き、レノは素っ頓狂な声を上げた。
「ばっ、俺は絶対しないぞ、と!」
「先輩ならいけます!私の腕、知ってるでしょ!?」
ヒロインは必死にまくしたてたが、それぐらいでツォンの決定が覆るわけもなく、「行ってこい」の一言で話は終了した。
ツォンはファイルをヒロインに手渡すと、そのままオフィスを出ていった。その背中をヒロインが絶望的な面持ちで見送っていた。
「じゃ、偽物の顔でも拝みに行きますか。な、『レイン』?」
レノはおどけた口調で呼ぶなと言われた名を呼んだが、ヒロインは険しい表情のまま何も言わなかった。
車に乗っても、ヒロインは無言だった。いつもは助手席に座るくせに、今日は拗ねた子供のように膨れ面で後部座席で膝を抱えて丸くなっていた。
「なーんでそんなご機嫌斜めなんだ?」
レノはバックミラー越しにヒロインを見る。一瞬目が合ったが、ヒロインの方から視線を逸した。
はぁ…と、レノは大きく溜息をついた。
こんなに機嫌が悪いヒロインは初めてだった。
「ファイル、目通しとけよ」
何を言っても無駄と判断し、レノはヒロインにファイルを投げると運転に集中しようと前に視線を向けた。
「…見ましたよ。殺害予告でしょ」
ヒロインはつまらなそうに言った。
「脅しには屈しないから、『レイン』の復活会見は開く。でも大事な『レイン』は会見には出さない」
バックミラーには、皮肉たっぷりの笑みを浮かべたヒロインがいた。
「大事な大事な『レイン』…あぁ、あのときしっかり…」
徐々にか細くなっていった声。最後の言葉は聞き取れなかった。
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