仮面の女
ヒロイン
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レノとヒロインの変装は完璧で、同じ現場にいたタークスの同僚にも、社長にも正体がバレることはなかった。
社長の命を救った二人の男女は、パーティー会場から忽然と姿を消した。
しかし、犯人確保時に大立ち回りを演じてしまったため、パーティーの招待客の間で、様々な噂が流れたとかいないとか。
一仕事を終え、いつもの格好になったレノは、オフィスに戻った。
誰もいないと思ったが、ソファーの肘掛けからだらしなく足が伸びている。
すらりと長いその脚。
姿はソファの背もたれに隠れていたが、その持ち主はすぐにわかった。
「ヒロイン、帰ったんじゃなかったのか?」
覗き込んだ先、そこには――
「って、おま、何だその顔!?」
真っ白なのっぺらぼうがいた。
「あー先輩、お疲れ様でしたー」
いくつか空いた穴のうちの二つがぱちりと開いた。
「あーこれ、厚塗りしたらケアしないと。面倒だけど」
どうやら化粧パックらしい。
そう言って、ヒロインは目をつむった。
良家の令嬢ともレインとも違う、いつものヒロイン。
見た目に無頓着で、飾らない、いつものヒロイン。
この姿のヒロインが、本来のヒロインなのだろうか。
それとも、まだ仮面を被っているのか。
「なぁ、ヒロイン」
話しかけると、再びヒロインの両の目が開き、レノを見た。
「化粧、しないのか?」
そう問うと、化粧パック越しでもわかるほど、ヒロインがむっとした表情をした。
「ここにいるときぐらい、許して下さいよー。仕事のときはちゃんとしますから」
まるでオフィスにいるときは仕事ではないと言わんばかり。
レノは思わず噴き出した。
「あー先輩」
「ん?」
「今日のことは、二人の秘密ですよ」
ヒロインが口元で人差し指を立てた。
そして、いたずらっぽく笑い、片目をつむってみせた。
化粧パック越しなのに、レノにはヒロインの笑顔がはっきりとわかった。
それが本物の笑顔だということも。
「あぁ、約束するぞ、と」
「それに――」
ヒロインは起き上がり、化粧パックを取って、にやりと笑った。
「私がすっぴんの方があらぬ誤解が生まれて面白いですし!」
「…頼む、1回でいいから化粧してくれ」
END
2018/08/23
.
社長の命を救った二人の男女は、パーティー会場から忽然と姿を消した。
しかし、犯人確保時に大立ち回りを演じてしまったため、パーティーの招待客の間で、様々な噂が流れたとかいないとか。
一仕事を終え、いつもの格好になったレノは、オフィスに戻った。
誰もいないと思ったが、ソファーの肘掛けからだらしなく足が伸びている。
すらりと長いその脚。
姿はソファの背もたれに隠れていたが、その持ち主はすぐにわかった。
「ヒロイン、帰ったんじゃなかったのか?」
覗き込んだ先、そこには――
「って、おま、何だその顔!?」
真っ白なのっぺらぼうがいた。
「あー先輩、お疲れ様でしたー」
いくつか空いた穴のうちの二つがぱちりと開いた。
「あーこれ、厚塗りしたらケアしないと。面倒だけど」
どうやら化粧パックらしい。
そう言って、ヒロインは目をつむった。
良家の令嬢ともレインとも違う、いつものヒロイン。
見た目に無頓着で、飾らない、いつものヒロイン。
この姿のヒロインが、本来のヒロインなのだろうか。
それとも、まだ仮面を被っているのか。
「なぁ、ヒロイン」
話しかけると、再びヒロインの両の目が開き、レノを見た。
「化粧、しないのか?」
そう問うと、化粧パック越しでもわかるほど、ヒロインがむっとした表情をした。
「ここにいるときぐらい、許して下さいよー。仕事のときはちゃんとしますから」
まるでオフィスにいるときは仕事ではないと言わんばかり。
レノは思わず噴き出した。
「あー先輩」
「ん?」
「今日のことは、二人の秘密ですよ」
ヒロインが口元で人差し指を立てた。
そして、いたずらっぽく笑い、片目をつむってみせた。
化粧パック越しなのに、レノにはヒロインの笑顔がはっきりとわかった。
それが本物の笑顔だということも。
「あぁ、約束するぞ、と」
「それに――」
ヒロインは起き上がり、化粧パックを取って、にやりと笑った。
「私がすっぴんの方があらぬ誤解が生まれて面白いですし!」
「…頼む、1回でいいから化粧してくれ」
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