仮面の女
ヒロイン
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
君の顔をよく見せてくれ。その仮面の下の素顔を。
――いいえ、それはできません。なぜなら、私はひどく醜いから。
――それを見たあなたは、きっと余所へと行ってしまうでしょう。
仮面を被ったままの彼女は、誰よりも美しい。
しかし、素顔を見せない相手を、心から愛することなどできるだろうか。
----------
「おはようございます」
静かなオフィスに響く朝の挨拶。
新人のヒロインだ。
レノは、オフィスの入口にちらりと視線を送り、挨拶を返した。
すらりとした長身、ひきしまった体。
女性にしては背が高いのもあって、小柄な男性と言っても通用するかもしれない。
いや、彼女は実際に男かもしれない。
雑にまとめた長い黒髪と、化粧けのない顔。
あまりに自分の容姿には無頓着だ。
それに――
「レノ先輩、昨日言ってた映画見ましたけど、正直微妙です。ヒロインが女々しすぎて、画面殴りそうになりました」
「だから言っただろ、絶対好みじゃないって。先輩の言うことは聞いておくもんだぞ、と」
「うーん、おっしゃるとおり」
感性も行動も、どちらかといえば男。
ヒロインと話していると、女性というより、男友達と話しているような感覚に陥る。
そういったヒロインの飾らない言動を気に入り、レノはヒロインとよくつるんでいた。
「今日も、なんか視線を感じるぞ、と」
ヒロインと一緒に行動するようになってしばらくすると、いつもとは違う視線を女性から送られていることに気づいた。
女性にモテるのとは違う類の…
「あー、きっと私、男だと思われてるんですよ」
美男同士だから…ね、と、ヒロインはレノを見てにやにやと笑った。
その意味するところを察し、レノは溜息をついた。
「ヒロイン、お前、明日から化粧してこい」
このまま噂が広まると、女の子が寄り付かなくなってしまう。
レノは真剣な顔でヒロインに迫った。
「えー、嫌ですよ面倒くさい」
しかし、ヒロインは心底嫌そうな顔をし、ぶっきらぼうに言う。
「女はみんなしてるぞ、と」
「あー、それは偏見ってやつです。ハラスメントです」
昨今、ハラスメントには厳しい世の中である。レノはぐっと言葉を飲み込んだ。
どうにかヒロインを女に見せる方法はないものかと考えていると、携帯に任務の通知が届いた。
「あ、私のところにも」
二人はオフィスに取って返した。
.
――いいえ、それはできません。なぜなら、私はひどく醜いから。
――それを見たあなたは、きっと余所へと行ってしまうでしょう。
仮面を被ったままの彼女は、誰よりも美しい。
しかし、素顔を見せない相手を、心から愛することなどできるだろうか。
----------
「おはようございます」
静かなオフィスに響く朝の挨拶。
新人のヒロインだ。
レノは、オフィスの入口にちらりと視線を送り、挨拶を返した。
すらりとした長身、ひきしまった体。
女性にしては背が高いのもあって、小柄な男性と言っても通用するかもしれない。
いや、彼女は実際に男かもしれない。
雑にまとめた長い黒髪と、化粧けのない顔。
あまりに自分の容姿には無頓着だ。
それに――
「レノ先輩、昨日言ってた映画見ましたけど、正直微妙です。ヒロインが女々しすぎて、画面殴りそうになりました」
「だから言っただろ、絶対好みじゃないって。先輩の言うことは聞いておくもんだぞ、と」
「うーん、おっしゃるとおり」
感性も行動も、どちらかといえば男。
ヒロインと話していると、女性というより、男友達と話しているような感覚に陥る。
そういったヒロインの飾らない言動を気に入り、レノはヒロインとよくつるんでいた。
「今日も、なんか視線を感じるぞ、と」
ヒロインと一緒に行動するようになってしばらくすると、いつもとは違う視線を女性から送られていることに気づいた。
女性にモテるのとは違う類の…
「あー、きっと私、男だと思われてるんですよ」
美男同士だから…ね、と、ヒロインはレノを見てにやにやと笑った。
その意味するところを察し、レノは溜息をついた。
「ヒロイン、お前、明日から化粧してこい」
このまま噂が広まると、女の子が寄り付かなくなってしまう。
レノは真剣な顔でヒロインに迫った。
「えー、嫌ですよ面倒くさい」
しかし、ヒロインは心底嫌そうな顔をし、ぶっきらぼうに言う。
「女はみんなしてるぞ、と」
「あー、それは偏見ってやつです。ハラスメントです」
昨今、ハラスメントには厳しい世の中である。レノはぐっと言葉を飲み込んだ。
どうにかヒロインを女に見せる方法はないものかと考えていると、携帯に任務の通知が届いた。
「あ、私のところにも」
二人はオフィスに取って返した。
.
1/6ページ