「ねぇレノ。まだ起きてる？」

　突然話し掛けられ、レノは心臓が飛び出るかと思うぐらい驚いた。自分を情けなく思いつつ、平静を装って返事をした。

「サマータイムって、本当に迷惑だけど、私、今少し感謝してる」

「…あんなに怒り狂ってたのにか？」

「怒り狂うって…まぁ、確かにそうだけど…」

　ヒロインは言葉を切り、小さな溜息をついた。

「でも、こうしてレノと一緒にいられるのも、悪くないかなー…なんて」

　ヒロインの言葉に、レノは目を丸くした。思わず振り返って、暗闇の向こうにあるヒロインの顔を見る。明かり一つ無い部屋でははっきりと見えなかったが、少しだけ恥ずかしそうな、照れたようなヒロインの表情が見て取れた。

「あ、ほら！普段忙しくて、あんまり話とかしないし…お、お互いの親睦を深めるいい機会かなーって、ね」

　確かにいい機会かもしれない、とレノは思った。ヒロインの意外な一面を見ることができたし、ヒロインを知るには悪くないシチュエーションだ。
　レノは不敵な笑みを浮かべた。

「そうだな、まぁこういうのも悪くはないぞ、と。ってことで、互いをよく知るために、そっち行ってもいいか？」

　レノは返事を聞く前に、ヒロインのベッドに潜り込んだ。



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