「もーやってらんない！！」

　ここに来て収まり掛けていたヒロインの怒りが爆発した。

「帰る！」

　ヒロインは立ち上がり、机に投げていたジャケットを掴んだ。

「ちょ、お前帰るって…エレベータ止まってるぞ、と」

　出て行きかけていたヒロインが足を止める。振り返ったその顔は、怒りを通り越して絶望の色が濃く浮かんでいた。

「そうだった…」

　がくっと肩を落としたヒロインは、その場にへたり込んだ。

「帰ることすらできないって…私が何したってのよ」

　先程までの元気はどこへやら。ヒロインはすっかり落ち込んでいた。レノはヒロインに近づくと、手を差し伸ばした。

「ここにいても仕方ないな。とりあえず、仮眠室行くぞ、と」

「仮眠室って…如何わしいこと考えてるでしょ」

　ヒロインが訝しげな視線を投げてきたが、レノは涼しい顔をしてそれを受け流した。実際に考えてないと言えば嘘になる。が、タークスに所属する女性を押し倒してどうこうする気力は、さすがのレノにもなかった。

「絶対に、何もしないでよ」

　何度もヒロインに念を押され、レノは軽く肩を竦めた。



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