少しは親しくなれたと思っていた。



　その笑顔も、俺に向けられるものだけは特別であると思っていた。



　でも、それはまやかし。



　そうであればいい。



　そう願った俺の心が見せた幻だったのだ。



　勘違いで舞い上がっていた自分が恥ずかしい。



　僅かでも期待させる態度を取ったヒロインが――





　憎い？



　悪い？





　違う。



　ヒロインは――



「――悪くない」



「え？」



「ヒロインは悪くないぞ、と。だから――」



　最後に、もう一度笑ってくれないか。



　いつものように。



　太陽に向かって咲く花のように。



「最後だなんて、そんな…」



　一層ヒロインの顔が曇る。



　今にも花弁を散らせそうなその顔に、俺の心が軋む。



　そんな顔をさせたいわけじゃない。



　笑ってほしいだけなのに。



「…最後だなんて、言わないでください。彼女がいるの知らなくて、浮かれていた私が悪いんです。来てくれるだけでよかったのに…ただ、会えるだけで――」



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