ヒロインの笑顔は、太陽の下で精一杯咲き誇る花のようだ。



　そう誰かが言っていた。



　初めてヒロインに会ったとき、俺も同じように感じた。



　ただ、皆の心を癒す存在ではなく、俺のためだけにそうあってほしいと思った。





flower





「こんにちは、レノ」



　退屈な八番街の見回り。



　それもヒロインに会えば、楽しい一時に変わる。



　俺にとっては、この時間だけが心休まる時間だった。





　ヒロインは八番街ステーション近くのカフェで働いていた。



　俺が近くを通れば、店から姿を現し、声を掛けてくれる。



「よお、ヒロイン」



　ヒロインの姿が見えれば、俺は必ずそのカフェに立ち寄った。



「ブラックでいいのよね」



「あぁ」



　何度も通い、毎度同じ物を注文すれば、嫌でもそれを覚える。



　それと同時に、俺のこともヒロインに記憶させたかった。



　見事にそれは成功した。



　ヒロインの中に『俺』という存在が生まれた瞬間だった。



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