苦くて飲めない
ヒロイン
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いつも一緒だった。
一緒にいるのは心地よかった。
付き合っていたわけではないけど、誰よりも長く隣にいた。
それが当たり前のことなんだ、と思っていた。
だから、『好き』だと意識したことはなかったのに――
「ヒロイン、俺、あいつと付き合おうかと思うんだけど…お前、どう思う?」
初めて相談された。
でもその内容は、あまり愉快なものではなかった。
理由は…わからない。
いや、わからない振りをしたいだけかもしれない。
「レノの好きにしたらいいよ」
そう言った私の声は、自分でも驚くぐらい不貞腐れたものだった。
どうして?
別にレノとはそういう仲では…ない。
だから、別に私には関係ないはずなのに。
何故、こんなに苦い思いをしなきゃならないんだろう。
「それはそうだな、と」
何でそんな寂しそうな顔をするの?
止めてほしいなら、嫌だと言ってほしいなら、そう言えばいいのに!
「俺…お前に止めてほしいのかも」
ドキッとした。
まるで私の心を見透かしたようなタイミングだったから。
「でもお前、全然そんな気なさそうだな」
違う。
止めたいんだ、私は。
本当は、嫌だと言いたいんだ。
苦い。
苦くて苦くて、飲み込みたくても飲み込めない。
そんな自分の気持ちに気付いてしまった。
飲めない。
吐き出したい。
だから、この思い、全部伝えてしまおう。
「…私、嫌かも。レノが、他の人と一緒にいるの」
レノが、にやりと笑った。
「知ってたぞ、と」
嵌められた。
私は苦虫を噛み潰したような顔をして、レノに言った。
「やっぱり、今の言葉、取り消すわ」
END
2009/08/26
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一緒にいるのは心地よかった。
付き合っていたわけではないけど、誰よりも長く隣にいた。
それが当たり前のことなんだ、と思っていた。
だから、『好き』だと意識したことはなかったのに――
「ヒロイン、俺、あいつと付き合おうかと思うんだけど…お前、どう思う?」
初めて相談された。
でもその内容は、あまり愉快なものではなかった。
理由は…わからない。
いや、わからない振りをしたいだけかもしれない。
「レノの好きにしたらいいよ」
そう言った私の声は、自分でも驚くぐらい不貞腐れたものだった。
どうして?
別にレノとはそういう仲では…ない。
だから、別に私には関係ないはずなのに。
何故、こんなに苦い思いをしなきゃならないんだろう。
「それはそうだな、と」
何でそんな寂しそうな顔をするの?
止めてほしいなら、嫌だと言ってほしいなら、そう言えばいいのに!
「俺…お前に止めてほしいのかも」
ドキッとした。
まるで私の心を見透かしたようなタイミングだったから。
「でもお前、全然そんな気なさそうだな」
違う。
止めたいんだ、私は。
本当は、嫌だと言いたいんだ。
苦い。
苦くて苦くて、飲み込みたくても飲み込めない。
そんな自分の気持ちに気付いてしまった。
飲めない。
吐き出したい。
だから、この思い、全部伝えてしまおう。
「…私、嫌かも。レノが、他の人と一緒にいるの」
レノが、にやりと笑った。
「知ってたぞ、と」
嵌められた。
私は苦虫を噛み潰したような顔をして、レノに言った。
「やっぱり、今の言葉、取り消すわ」
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