「掃除でもしてたのか？」



　ヒロインの額に浮かぶ汗を見て、レノは言った。



　そんなところだ、とヒロインは言ったが、レノにはそれが嘘だと分かった。



　ヒロインが行ったのは、恐らく証拠の隠滅だ。



　何の証拠かは分からない。



　浮気か、と最悪の状況を考えたが、たぶん違う。



　もし浮気の証拠なら、もっと巧妙に隠すだろう。



　自分に気付かせることなく。



「ケーキありがとう。お茶入れるね」



　ヒロインの言葉に生返事をしながら、レノは寝室に視線を滑らせた。



　証拠は、さっきヒロインが出てきた寝室にある。



　レノは確信した。



　そして、自然に寝室に入る方法は一つ。



　ヒロインを騙すようで気が引けたが、その気になったらそのまま行為を続行すればいい。



　レノはおもむろに立ち上がると、ヤカンを火にかけようとしていたヒロインを後ろから抱き竦めた。



「そんなもん、後にしろよ、と」



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