ヒロインは、先輩でもあり、恋人でもあるレノの後ろを歩いていた。



　その背中を見ながら考える。



　妊娠したと言ったら、どんな反応をするだろうか、と。



　まさか否定的な態度を取ることはないだろうが…



　しかし、彼は神羅では有名な遊び人。



　愛されている実感はあるが、万が一ということもある。



　何しろ今後の人生を左右する出来事だ。



　慎重に事を運ばなければ。



　ヒロインはぐっと拳を握り締めた。





「なぁ、ヒロイン」





「え？あ…うわっ！」



　いきなり目の前に現れたレノの顔に驚き、ヒロインはすっとんきょうな声を上げた。



「お前、何一人で力んでるんだ？」



「へ？」



　ヒロインは胸の前で握られた拳を慌てて開き、そのまま左右に振った。



「な、何でもない！」



「ふーん…」



　訝しむレノの視線を避け、ヒロインはレノの前に立った。



「私のことより、任務遂行が優先。さっさと終わらせよう」



　その言葉を自分にも言い聞かせた。



　まずは任務。



　妊娠のことは…後回しだ。



　物事にはタイミングがある。



　きっと告白するいいタイミングがやってくるはずだ。



　ヒロインは楽観的な方向へ思考を導いた。



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