「ただ今戻りました――って、誰もいないのか」



　突然聞こえてきた声に、身体が震えた。



　レノが、帰ってきた。



　私は慌てて涙を拭い、腹に力を入れて言った。





「お帰り」





「なぁんだ、いたのか」



　レノが陽気に笑って言った。



　でもそれが、今は辛い。



　後始末を押しつけた身で、笑えるわけない。



　謝らなきゃ――



「レノ、あの――」



「ん！？」



　急にレノが距離を詰めてきた。



　レノの顔が、間近に迫る。



　吐息を感じられる距離だ。



「な、何？」



　レノの眉根が寄った。



「…泣いてたのか？」



　バレた…！



　私は顔を背け、レノと距離を取った。



　そして、慌てて涙の跡を手の甲で拭う。



　最悪だ。



　こんなところを見られるなんて。



　必死で言い訳を考えてみるものの、思い浮かばない。



　しばらくの沈黙の後、レノが嘆息した。



「どうせ、悔しくて泣いてたんだろ？」



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