意地っ張りの恋愛譚
ヒロイン
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
時間が遅いこともあり、店は思ったより空いていた。
待つことなく席に案内され、二人はまずビールを注文した。
「お疲れ様」
グラスの触れ合う音が小さく響いた。
「レノ、私とご飯食べて、彼女怒らないの?」
レノが傾け掛けていたグラスを戻した。
「彼女は2年ぐらいいないから、心配無用だぞ、と」
「ふーん…」
いつも連れている女は彼女ではない。
レノにそう断言され、ヒロインは複雑な感情を抱いた。
それは、安心でも、嫉妬でもない、何か別の感情だった。
「もう2年経ったのか」
唐突に切り出された会話に、ヒロインは箸を止めた。
「長いような、短いような…」
「その話は、やめよう」
ヒロインはそう言って、箸を置いた。
胸が、苦しい。
突然、熱いものが込み上げて来る。
ヒロインはレノに悟られないように下を向き、立ち上がった。
「…ごめん、トイレ行ってくる」
訝しむようなレノの視線から逃げるように、ヒロインは足早に席を離れた。
トイレに駆け込んだヒロインは、鏡で自分の顔を見た。
「…ひどい顔」
目は潤み、充血している。
「バカだ、私…」
レノの言動に少しでも期待した自分の愚かさを呪った。
ヒロインはこぶしを握り、鏡に映る自分の顔を殴った。
レノと付き合っていたのは、もう過去のことだと割り切っていたはずなのに、そこには、まだ元に戻りたいと願う自分がいた。
「自分で、壊したくせに…」
素直になれず、自ら壊したら関係。
あれから、本気で恋愛をすることはなくなった。
できなかった。
(でも…まだ、こんなに好きなんだ)
ほんの少しの言動で簡単に揺り動かされるぐらい。
ヒロインは、鏡から目を反らした。
「ヒロイン、料理冷めちまったぞ、と」
レノが指差した料理は、ヒロインが食べたいと思って注文したものだった。
箸がついていないところを見ると、レノはヒロインが戻るのを待っていてくれたらしい。
ヒロインの胸が軋む。
「変えてもらうか?」
ヒロインは小さく首を振った。
気を回してくれるレノの言葉が、逆にヒロインを苦しめる。
そんなに優しくされたら、期待してしまう。
儚い希望に縋ってしまう。
だから、優しくしないで。
.
待つことなく席に案内され、二人はまずビールを注文した。
「お疲れ様」
グラスの触れ合う音が小さく響いた。
「レノ、私とご飯食べて、彼女怒らないの?」
レノが傾け掛けていたグラスを戻した。
「彼女は2年ぐらいいないから、心配無用だぞ、と」
「ふーん…」
いつも連れている女は彼女ではない。
レノにそう断言され、ヒロインは複雑な感情を抱いた。
それは、安心でも、嫉妬でもない、何か別の感情だった。
「もう2年経ったのか」
唐突に切り出された会話に、ヒロインは箸を止めた。
「長いような、短いような…」
「その話は、やめよう」
ヒロインはそう言って、箸を置いた。
胸が、苦しい。
突然、熱いものが込み上げて来る。
ヒロインはレノに悟られないように下を向き、立ち上がった。
「…ごめん、トイレ行ってくる」
訝しむようなレノの視線から逃げるように、ヒロインは足早に席を離れた。
トイレに駆け込んだヒロインは、鏡で自分の顔を見た。
「…ひどい顔」
目は潤み、充血している。
「バカだ、私…」
レノの言動に少しでも期待した自分の愚かさを呪った。
ヒロインはこぶしを握り、鏡に映る自分の顔を殴った。
レノと付き合っていたのは、もう過去のことだと割り切っていたはずなのに、そこには、まだ元に戻りたいと願う自分がいた。
「自分で、壊したくせに…」
素直になれず、自ら壊したら関係。
あれから、本気で恋愛をすることはなくなった。
できなかった。
(でも…まだ、こんなに好きなんだ)
ほんの少しの言動で簡単に揺り動かされるぐらい。
ヒロインは、鏡から目を反らした。
「ヒロイン、料理冷めちまったぞ、と」
レノが指差した料理は、ヒロインが食べたいと思って注文したものだった。
箸がついていないところを見ると、レノはヒロインが戻るのを待っていてくれたらしい。
ヒロインの胸が軋む。
「変えてもらうか?」
ヒロインは小さく首を振った。
気を回してくれるレノの言葉が、逆にヒロインを苦しめる。
そんなに優しくされたら、期待してしまう。
儚い希望に縋ってしまう。
だから、優しくしないで。
.