温かい。





　ほっとするぬくもりに、ヒロインは自然と微笑んでいた。





　こんなに穏やかな気分なのは、いつ以来だろう――





「ヒロイン、大丈夫…なわけないよな」



「レノ…？」



　しっかりとレノに握られた右手。



　安らいだ気持ちにさせてくれたのは、レノだった。





　やっぱり、レノがいないとダメなんだ。





　張り詰めていたものがぷつりと切れ、ヒロインは声を上げて泣いた。



　レノは黙って、ヒロインの手を握っていた。





「ヒロイン、ごめんな…大人気なかった」



　レノの指が、ヒロインの溢れる涙を掬った。



「俺が父親じゃ、不安だったか？」



「え？」



　レノの言葉に、ヒロインは目を大きく見開いた。



「さっき、聞いた。本当は、ヒロインの口から聞きたかったんだけどな」



　照れたようにレノが笑う。



　しかし、それも一瞬。



　レノが急に真剣な顔になった。



　ヒロインはレノの変化に、不安を覚えた。





　もう一人の子供のことを持ち出されるかもしれない。





「昨日の言葉は撤回するぞ、と」



　レノが、深呼吸をした。



「俺を、その子の父親にしてください」



　今度は別の意味で、ヒロインの頭が真っ白になった。



「あ、『してください』ってのはおかしいか…俺の子だし――」



　レノが顎に手を当て、うーんと唸っている。



　一方ヒロインは、稼動率が極端に下がった頭で、先程のレノの言葉を解析していた。





　誰が、誰の父親になるって？



　レノが、この子の？





「ちょっ、ちょっと待って！」



　ヒロインは起き上がり、声を張り上げた。



「父親になるって――私は、嬉しいけど…もう一人の子はどうするの？」



「は？」



　レノの顔が、豆鉄砲を食らった鳩のようになる。



「もう一人って…双子なのか？」



　的外れなレノの返答に、ヒロインは顔をしかめた。



「違う！水商売の女の人との子供のこと！」



「は？」



　レノがすっとんきょうな声を上げた。



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