「できちゃった…」



　手にした妊娠検査薬。



　そこにははっきりと陽性を示すマークが現れていた。



「喜んでくれるかな」










Stand by Me.










　翌日、ヒロインはいつもより早く出社した。



　子供ができたことを、少しでも早くレノに伝えたくて。



　軽く鼻歌を歌いながら、ヒロインは会社の入口をくぐった。





「ね、知ってる？レノさんの話…」



「え、なになに！？」



　エレベーターホール前で『レノ』の名前を耳にし、ヒロインは思わず足を止めた。



　声のした方には、神羅の一般女性社員がいた。



　ヒロインは二人の女性社員の視界に入らない位置に移動し、悪いと思いながらも聞き耳を立てた。





「どうやら、隠し子がいるらしいよ」



「えー！？」





　一緒になって声を上げかかったヒロインは、口を押さえることで、なんとかそれを飲み込んだ。





　女性社員は、同僚に静かにするよう口の前で指を立てた。



　そして、一段と声のトーンを落として言った。



「しかも、相手、水商売の女らしいよ…」



「でも、レノさん、彼女いるんじゃなかった？」





　それを聞き、ヒロインの心臓が跳ねる。



　ヒロインは二人の死角に移動した。





「そうだけど…でも、目撃した子は、彼女じゃなかったって言ってた」



「その噂、あんまり広がると不味いんじゃない？確かレノさんの彼女って、タークスでしょ？血を見るなんてことには…」



「まさか！あくまで噂だし、大丈夫よ」





　二人がエレベーターに乗り込み、いなくなった後も、ヒロインはしばらくその場から動けなかった。





「レノに、隠し子…？」



　ヒロインは無意識のうちに、自分の腹に両手を当てていた。



「どうしよう…」



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