勢いこんでヒロインの働く都市開発部門のオフィスにやってきたレノだったが、オフィスの前で躊躇していた。





　おめでとう。



　そう素直にヒロインを祝福できるのか？



　しかし、未練たらたら引き止めるのは格好が悪い。



（ここは聞き分けのいい大人の男として――）



　レノが決意を固め、オフィスの扉を開けようとしたとき、それは内側から開いた。



「あ、レノさん！ヒロイン、レノさん来てるよ！」



「え？」



　オフィスの中程で、男と仲睦まじく話していたヒロインが顔を上げ、困った顔をした。



　レノはヒロインの表情の変化から、その男がヒロインのフィアンセだと感じ取った。



（ヒロインが幸せなら――）



　レノは拳を握った。



　ゆっくりと近づいてきたヒロインが口を開いた。



「レノ、私まだ仕事が…」



　ヒロインを前にし、レノの心が揺れた。



（本当にいいのか？）



　ヒロインを手放しても。



　他のどの女とも違う、特別な存在。



　いつの間にかヒロインはそうなっていた。



　こんなに一人の女を好きになるなんて、思ってもみなかった。



（俺は、ヒロインのことが――）



　レノは真っ直ぐヒロインの目を見つめた。



　そして、ヒロインの肩に手を置いた。





　ごくっ、とレノは唾を飲んだ。















「ヒロイン、俺と結婚してくれ」



　ヒロインが固まった。



　ヒロインだけでなく、都市開発部門のオフィス全体が凍り付いた。



　レノは周りを全く気にせず、さらに言葉を紡ぐ。



「俺が誰よりもヒロインを幸せにしてみせるぞ、と」



　オフィス全体の視線が二人に集まり、固唾を飲んで様子を見守る。



　しばらくして、ヒロインの目から大粒の涙が零れ落ちた。



　レノは心臓が破裂しそうになりながらも、静かにヒロインの言葉を待った。










「よろしくお願いします」



　ヒロインの笑顔と同時に、オフィスが黄色い声援と拍手に包まれた。



→おまけ



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