「はぁ？」



　レノはすっとんきょうな声を上げた。



　まさに青天の霹靂。



　自分の身に降って湧いた結婚話に、レノは驚くしかなかった。



「お前、どこからそんなガセネタ拾ってきたんだ？」



　レノは呆れ顔で後輩を見た。



　仮にもタークスが信憑性の欠片もない話に踊らされたなど、恥以外の何物でもない。



　しかしイリーナは眉を吊り上げ、顔を赤くして怒っていた。



「ガセなんかじゃありません！私、ヒロインさんが話してるの聞いたんです！…あれ？」



　そこまで一気にまくし立てたイリーナの顔から血の気が引いた。



「え…先輩、本当に心当たり、ない？」



「…ない」



　イリーナの顔がしまったとばかりに強ばった。



「ま、お前の勘違いだろ」



　レノはあくまで平静を装って笑ったが、内心穏やかではいられなかった。










（ヒロインが、結婚…俺以外と？）



　ありえないと笑い飛ばそうとしたレノの顔が引きつった。



（まさか、この前女と飲みに行ってそのまま――ってのがバレたのか？いや、まさか、な。でも、そういや最近何かと理由付けて会ってくれないし――）



　思い当たった事柄に、レノは頭を抱えた。










　それを見ていたタークスのメンバーは、互いに目を見合わせた。



「ツォンさん、私、不味いこと言いました？」



「あぁ…」



「しばらく立ち直れそうにないな」



　項垂れるレノに対し、３人は申し訳なさそうに視線を送った。










（ヒロインが結婚…俺、捨てられたってことか？）



　幾分落ち着いてきた頭で、レノは自分の行いを振り返っていた。



　確かにヒロインと付き合いながら、他の女に現つを抜かすこともあった。



　それなのに自分はヒロインをひどく束縛してきた。



　思えば、ヒロインには何一つしてやらなかった。



（捨てられて当然だな…）



　レノは一つの決意を胸に立ち上がった。



「ツォンさん、今日行くところあるんで帰ります！」



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