同月某日、雨。



　本日夕刻、動きあり。



　注意されたし。










「よぉ、元気ないな」



「レノ…」



　ヒロインがほっと表情を和らげた。



「何かあったのか？」



　そう問うと、ヒロインが困ったように視線を泳がせた。



「うん、ちょっと」



「さては男か？」



　ヒロインはくすっと笑って首を振った。



「まさか」



　レノはいつもと同じように、ヒロインの横に座った。



　横目で確認したヒロインの顔は青白い。



「なぁ、ヒロイン」



「何？」



　規則正しく打ち出され、落ちていく玉を見ながらレノは言った。



「心配事あるなら言えよ」



　ヒロインがこちらを向き、笑った。



「ありがと…って、レノ！プレミアタイトル来た！！」



　一瞬だったが、ヒロインの打つ台の液晶には、白背景に黒い文字。



「おまっ…それ俺が見たかったやつ！」



「すごい！なんか一生分の運使っちゃった気がする」



　その一言に、レノはびくっと身体を震わせた。



　歓声を上げるヒロインとは対照的に、レノの胸には黒い靄が漂い始めていた。



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