某月某日。



　その女はいつものように昼頃家を出る。



　行き先もいつもと同じ。



　特筆すべきことなし。










「お、調子いいみたいだな」



　騒音に近い音楽が流れるパチンコ屋。



　やや声を張り上げて話し掛けると、ヒロインが振り返った。



「うん、まぁね」



　にかっと笑うと、ヒロインが自分の後ろを指差した。



「レノも打ちなよ」



「悪ぃな」



　ヒロインから一箱貰い、レノは隣の台に座った。



「何か来た？」



「んー、格納庫ぐらい」



「ふーん、俺あれ見たいんだよな」



「何？」



「最後のシ者」



「確変確定じゃん」



「だからだぞ、と」



　ぷかーっとタバコを吹かしながら、二人は通にしかわからないような会話を淡々と続けた。



　しばらくしてヒロインが席を立った。



　レノはそれを横目で確認し、しばらく時間を置いて後を付けた。





　トイレ、か。



　それだけ確認すると、気付かれないように先に戻った。



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