「レノ、本当にもうやめなさいよ。タークスが浮気相手の男に殺された――だなんて、お笑い草よ」



「確かに、それは笑えるな」



　レノは息を吹き掛け、冷ましたコーヒーを一口含んだ。



「そんなこと繰り返しても、埋まらないわよ」



　レノはコーヒーをごくりと飲み込み、真っ直ぐヒロインを見据えた。



「何が？」



「孤独」



　ヒロインがぽつりと漏らした言葉は重く、さすがのレノも何も言えなかった。



「何も生まない愛だもの。埋まるはず、ないのよ」



　ヒロインがカップをテーブルに置いた。



「そんなもの計ってみても、虚しくなるだけよ」



　レノはヒロインから視線を外し、手に持ったカップの中で揺れるコーヒーを見つめた。



　ヒロインの溜息がレノの耳に届く。



「忘れられないのは分かる。連載ヒロインは、あんたにとって特別な人だったから、ね」



　カップの中のコーヒーが一段と激しく波立つ。



「無理に忘れようとしなくていいのよ。格好悪くたっていいじゃない。生きてるって信じて、待ってなさいよ」



　いつまでもしみったれた顔するなとヒロインに叱咤され、レノはふっと笑った。



「悪ぃな、気遣わせて」



「どういたしまして」



　レノはすっかり冷めたコーヒーを飲み干した。



END


2007/10/13


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