「あ、ヒロインさんもご飯いかがですか？」



　思わぬカウンター。



　後輩が今まで以上に満面の笑みを浮かべた。


　それはあれか。

　自分の料理と食べ比べろって言いたいのか！？

　勝ったと言わんばかりの満足気な顔が腹立たしい。



「ごめんなさい。今日は外で食べてきたの」



「そうですか。じゃあちょうどよかったです」



　何が？

　どうちょうどよかったの？

　もう全然わかんない！



　腸煮え繰り返ってきた。



「あー…飯！さっさと食べちまうか」



　一触即発の空気に居心地悪くなったのか、呆気に取られる私を残し、レノは後輩を向かい側に座らせて食事を再開した。




　元はと言えば、あなたが蒔いた種なんですけど。

　何逃げてんのよ。




　腹が立つのを通り越して、全てが馬鹿馬鹿しくなってきた。

　もう付き合ってらんない。

　どうぞ勝手にしてください。

　…とりあえずビール飲もう。




　それなりに楽しそうなレノの後ろを通り、冷蔵庫からビールを取り出して、私はリビングのソファに座った。



　相変わらずダイニングの二人の会話は弾んでいる。



　仕事が一緒だと、共有できるもの多いのかな。



　私には全然わからない話ばかり。



　つまんない。

　最悪。



　悪態を吐きたいのを堪えて、すぐそこまで出掛かっていた不平不満をビールで再度奥に追いやった。



　が、それだけではもう収まらないぐらい、蓄まり蓄まったフラストレーション。



　でも、ここでキレたら負けだ、ヒロイン！

　落ち着け。



　今にも吹き出しそうな怒りを抑えるには、とりあえずタバコだ。



　鞄を近くに引き寄せ、手探りで中を探した。



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