ヒロインがいないことに気付いた俺は、すぐに家を飛び出した。




　後悔に苛まれ、身を切られるような思いだった。



　でもそれは、ヒロインが負った傷を考えれば、当然の報いだ。




　失って初めて大切さがわかる？



　違う。



　こうなる前から、大事な人だったんだ。






　もう夜も遅い。



　ヒロインに何かある前に見つけないと――















「いやぁー！」












　どこかから聞こえてきた悲鳴。



　聞き覚えのある声に、汗が一気に冷や汗に変わった。




「ヒロイン！」



　すぐ近くだ。








「誰か助――」





　声が不自然な形で掻き消えた。




「ヒロイン！」




　声のした方に向かい、再度名前を呼ぶが返事はない。




　聞こえたのはくぐもった声と、荒い息遣い。







「しっかり押さえとけよ」



「何してるんだ、と」




　ヒロインの腕を押さえ付けていた男と、ヒロインに馬乗りになり、今自分のモノを取り出そうとしていた男の動きが止まった。



　ヒロインは、大粒の涙を流して震えていた。



　服を破られ、口の端には血がこびりついていた。




　痛々しいヒロインの姿に、ますます怒りが燃え上がる。



「何だ、おま――」



　醜悪な顔を怪訝そうな形に歪めた男を、俺は問答無用で蹴り飛ばした。



　こんな奴に皆まで言わせるつもりはない。



　もう一人、ヒロインの腕を押さえ付けていた男がナイフを抜き、ヒロインの頬に押し当てた。



　そこから一筋、ヒロインの頬に赤い線が付く。



「お前！」



　ヒロインが苦痛に顔を歪めた。



「これ以上近づくと、女の――」



　俺は男の持つナイフを蹴り飛ばし、そのままの勢いで男の顔面に蹴りを食らわせた。



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