いつものように残業もなく、定時に仕事を終えたヒロインは、うきうきと会社前の広場に立っていた。



　何ヵ月ぶりかのデートに心が弾む。




　腕時計に目を落とし、時間を確認しては辺りを見回す。



　それを幾度か繰り返すうちに、浮かれていた気持ちが焦りに変わる。




　疾うに待ち合わせの時間は過ぎていた。




「遅いなぁ…」



　初夏ということもあって外はまだ明るいが、時間は夜７時を回った。




　さすがにレノが心配になったヒロインは携帯を取り出し、リダイヤルを使ってレノに電話を掛けた。





　トゥルルル――



　トゥルルル――




　スピーカーから聞こえるのは呼び出し音。



　一向に繋がる様子もない。



　ヒロインは溜息をついて携帯を耳元から放した。




　終話ボタンに指を伸ばしたとき。




『悪ぃ、ヒロイン！もうすぐ着くから、ちゃんと待ってろよ、と』



　聞こえてきたのは待ちわびたレノの声。



　一言何か言ってやろうとしたが、一方的に話された挙げ句に通話を切られ、ヒロインは口を尖らせた。



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