逃亡者と追跡者の宿命
ヒロイン
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「はぁはぁ…っ」
柱の後ろに回り込んだヒロインは、背を柱に預け、呼吸を整えた。
全力で逃げ回ったため、口から吐き出される息は熱い。
肺から上ってくる呼気も、金臭い味がする。
「おーい。いい加減に諦めろよ、と」
静かな中に唯一響く靴音。
その主は、笑い混じりに言った。
それにヒロインはむっと顔をしかめ、柱の陰から顔を出した。
「そっちこそ、もう諦めなよ。しつこい男は嫌いなの」
ヒロインは男――レノに向けて舌を出した。
「相変わらず可愛げがないな、と」
苦笑して頭を掻くレノに、ヒロインは向き合って銃口を向けた。
「これ以上近寄らないで」
「わかってるぞ、と」
レノが悲しげに視線を落とした。
「「これが絶対ライン」」
二人同時に同じ言葉を口にする。
そして、二人同時に吹き出した。
「遠いな」
「仕方ないよ」
ヒロインの銃口は、変わらずレノの頭を狙っている。
しかしレノは、全く動じる気配もない。
むしろ楽しそうに笑った。
「これ以上踏み込んだら殺しちゃう」
「殺してしまう、だろ」
「よくわかってるじゃん」
ヒロインはにっこり笑った。
「まぁな」
付き合い長いからな。
そう言ったレノの顔は笑っていなかった。
「ヒロイン――もう、諦めろよ、と」
「しつこい」
レノがやや苛立たしげに眉を吊り上げた。
「レノ様が養ってやるって言ってるだろ」
「いーや!」
ヒロインはべーっと舌を出した。
「ちっ、力付くで捕まえてやる」
「できるもんならね」
レノが一歩踏み出す気配を感じ、ヒロインは回れ右をして走り出した。
近づきたくても近付けない。
ラインを越えたら、それは命の奪い合いの合図。
これが、追跡者と逃亡者の宿命。
ねぇレノ。
もう少しだけ、このままでいさせて。
END
2007/06/06
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柱の後ろに回り込んだヒロインは、背を柱に預け、呼吸を整えた。
全力で逃げ回ったため、口から吐き出される息は熱い。
肺から上ってくる呼気も、金臭い味がする。
「おーい。いい加減に諦めろよ、と」
静かな中に唯一響く靴音。
その主は、笑い混じりに言った。
それにヒロインはむっと顔をしかめ、柱の陰から顔を出した。
「そっちこそ、もう諦めなよ。しつこい男は嫌いなの」
ヒロインは男――レノに向けて舌を出した。
「相変わらず可愛げがないな、と」
苦笑して頭を掻くレノに、ヒロインは向き合って銃口を向けた。
「これ以上近寄らないで」
「わかってるぞ、と」
レノが悲しげに視線を落とした。
「「これが絶対ライン」」
二人同時に同じ言葉を口にする。
そして、二人同時に吹き出した。
「遠いな」
「仕方ないよ」
ヒロインの銃口は、変わらずレノの頭を狙っている。
しかしレノは、全く動じる気配もない。
むしろ楽しそうに笑った。
「これ以上踏み込んだら殺しちゃう」
「殺してしまう、だろ」
「よくわかってるじゃん」
ヒロインはにっこり笑った。
「まぁな」
付き合い長いからな。
そう言ったレノの顔は笑っていなかった。
「ヒロイン――もう、諦めろよ、と」
「しつこい」
レノがやや苛立たしげに眉を吊り上げた。
「レノ様が養ってやるって言ってるだろ」
「いーや!」
ヒロインはべーっと舌を出した。
「ちっ、力付くで捕まえてやる」
「できるもんならね」
レノが一歩踏み出す気配を感じ、ヒロインは回れ右をして走り出した。
近づきたくても近付けない。
ラインを越えたら、それは命の奪い合いの合図。
これが、追跡者と逃亡者の宿命。
ねぇレノ。
もう少しだけ、このままでいさせて。
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