「お疲れさま！かんぱーい！」



　ジョッキを軽く当て、そのまま口に運ぶ。



「っはぁ！仕事の後のお酒は最高ね。あ、生一つ！」



　親父みたいな発言の後、すかさず酒を追加したヒロインに、俺とザックスは目を剥いた。



　こいつ、中ジョッキ一気に飲み干しやがった…。



「…相変わらずペース早いな、ヒロインちゃんは」



　ははは…と乾いた笑い声を上げ、ザックスはゆっくりジョッキを傾けた。



　さすがに一度一緒に飲んで、ヒロインのペースには付いていけないとわかったのだろう。



　俺も同じように少しずつビールを流し込む。



　こんな無茶な飲み方してよく身体壊さないな…。



　隣に座るヒロインを横目で見ながら、俺は心配を通り越して呆れた。





　しばらくして、食べ物が運ばれ始め、やっとヒロインのペースが落ちた。



　しかしすでに２杯空けて、今は３杯目。



　俺たちはまだ１杯目を空けるかどうか、というところなのにだ。



「レノもザックスも、何か飲み物頼む？」



　空きかけのジョッキを見て気を利かせ、ヒロインがメニューを差し出した。



　それを受け取り、飲み物のページを開く。



「俺、生」


「清酒の冷や」



　店員を呼んで注文し、ザックスが「以上で」と言い掛けたのをヒロインが遮った。



「あ、生もう一つ！」



　キレイに飲み干したジョッキを店員に手渡し、幸せそうな顔のヒロイン。



「「……」」



　ハイペースで飲み続けて平然としているヒロインに、俺たちは絶句した。




　ヒロインには適わない。



　こいつが酔うなんて、天地が引っ繰り返ってもありえない気がしてきた。



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