落ち着きを取り戻したヒロインは男の方を向き、昨日のことを全く覚えていないと正直に話した。



「さぁヤるぞ、ってとこで寝ちまうぐらい飲んでたからな」



　男は呆れたように溜息をつき、頭を掻いた。




「ごめんなさい…」



　自分から誘っておきながら自分は寝てしまい、男に申し訳なくなり、ヒロインは肩を窄めた。




「で、俺の名前は覚えてるのかな？」



　男は首を傾げ、ヒロインの顔を覗き込む。



　男の整った顔を目の前にし、ヒロインはだんだんと顔が熱くなるのを感じた。



　そして、自分が誘った相手の名前すら覚えていないとは言えず、ヒロインは困って視線を逸らした。



　そんなヒロインの様子から察したのか、男はにやっと笑うと無理矢理ヒロインと視線を合わせてこう言った。



「俺の名前はレノ。覚えとけよ」



　レノは片目を瞑り、ヒロインの頭をぽんぽんと軽く叩く。



　心の広いレノの態度に救われ、ヒロインはレノに微笑んだ。



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