偶然近くで事の次第を目撃した女性社員が鋭い悲鳴を上げた。



　耳をつんざく声で、レノは我に返る。





　目の前には二人の人物。




　一人は血を流して倒れたヒロイン。




　そして、血の滴るナイフを力なく手に持つ一人の男。




　何が起こったのかわからない。





　ヒロインからコートを受け取ろうとしたのは覚えている。





　いきなり視界からヒロインが消え――いや、男が前に立ちはだかり――。





　ヒロインが倒れた。







　そこまで事態を整理した途端、レノはかぁーっと頭に血が上っていくのを感じた。




　ロッドを取り出すと、その柄をきつく握り締めた。




　自分とヒロインの間に立つ一人の男を、レノは何も言わず後ろから思い切りロッドで殴った。





　ぐっと低く呻いて跪いた男を冷たく見下ろして、レノは電磁ロッドの威力を最大にする。




　そして、それを力任せに男の頭目がけて振り下ろした。





　ぷすぷすと、髪の焼ける嫌な匂いが辺りに立ちこめる。





　男が崩れる様を、レノは無表情で眺めていた。



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