Smile again.
ヒロイン
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「さっぶ…」
お馴染みの黒スーツ一枚で、雪が降りしきる中、レノは本社の入口前でヒロインを待っていた。
まさか降るとは思わなかった雪に対して舌打ちをするが、寒さのせいでいつもの軽い音の代わりに吐息だけが虚しく漏れる。
辺りを見回せど、愛しい人――よりも今は恋しいコートの姿はまだ見当たらない。
どうせ準備に時間が掛かるだろうと思って、わざわざ仕事を抜け出してまで昼休み前に、コートを届けてくれと電話したというのに。
先程鳴らなかったのも忘れ、レノはまた舌打ちした。
(昼休み終わっちまうぞ…)
右腕に付けた時計に視線を落とし、レノは溜息をつく。
吐き出された白い息は、空気に溶けて消えた。
そして昼休みも終わりが近付き、閑散としていたビルの入口付近が騒つき始めた。
寒そうに身体を縮こまらせてビルの中へと急ぐ人の中には、薄着で身体を震わせ立っているレノを訝しむように見る者もいた。
そうでなくとも目立つレノは自然と周囲の視線を集める。
スーツのポケットに手を突っ込んだまま背を丸めていたレノは、苛立って辺りを鋭く睨み付けた。
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お馴染みの黒スーツ一枚で、雪が降りしきる中、レノは本社の入口前でヒロインを待っていた。
まさか降るとは思わなかった雪に対して舌打ちをするが、寒さのせいでいつもの軽い音の代わりに吐息だけが虚しく漏れる。
辺りを見回せど、愛しい人――よりも今は恋しいコートの姿はまだ見当たらない。
どうせ準備に時間が掛かるだろうと思って、わざわざ仕事を抜け出してまで昼休み前に、コートを届けてくれと電話したというのに。
先程鳴らなかったのも忘れ、レノはまた舌打ちした。
(昼休み終わっちまうぞ…)
右腕に付けた時計に視線を落とし、レノは溜息をつく。
吐き出された白い息は、空気に溶けて消えた。
そして昼休みも終わりが近付き、閑散としていたビルの入口付近が騒つき始めた。
寒そうに身体を縮こまらせてビルの中へと急ぐ人の中には、薄着で身体を震わせ立っているレノを訝しむように見る者もいた。
そうでなくとも目立つレノは自然と周囲の視線を集める。
スーツのポケットに手を突っ込んだまま背を丸めていたレノは、苛立って辺りを鋭く睨み付けた。
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