「どうしたの？」




　何故か照れたように笑うヒロインを抱き寄せ、レノはヒロインの耳元で囁いた。




「ありがとう」




「やだ…いつものレノじゃないみたい」




　顔を赤くして、そう言いながらもレノの背に腕を回したヒロインの温もりを感じて、レノは安堵する。





「部屋、真っ暗だったから、お前に何かあったかと思ったぞ、と」




　レノはヒロインの存在を確認するようにきつく抱き締めた。




　レノの意図が伝わったのか、ヒロインは優しく微笑むと、レノの髪を撫でた。




　まるで、子供にするかのように慈愛を込めて。





「心配、掛けちゃったね。でも、大丈夫。ずっと一緒にいるから」










　この生活を失うのが怖い。



　散々他人の日常を奪いながら馬鹿なことをと言われてもいい。





　これからもずっとヒロインといたいんだ――







　誰にも奪わせない。



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