簡単に食事を済ませた二人は、行きつけのバーへ向かっていた。




「ミッドガルは夜でも明るいね」



　歩きながらヒロインが空を見上げた。



　レノもつられて空に視線を向ける。




　冬の空は空気が澄んで星でも見えそうだが、ミッドガルの眩しすぎる明かりが邪魔をしていた。




　いくつもの魔ｺｳ炉で電力供給を行っているミッドガルでは、昼も夜も明かりが絶えることはない。



　自然の明かりを拒絶し、人工的な物で作り上げた街では、たぶん星空を見ることは適わないだろう。





「そういや、アイシクルロッジの夜空は綺麗だったな」



　ふと去年出張で行ったアイシクルロッジの星空を思い出した。



　ミッドガルでは見ることのできないもの。




「そっか…ここじゃ無理だよね」




　そう言ったヒロインの顔がどこか寂しげで、レノは握っていた手に力を込めた。




「今度の休みに連れてってやるぞ、と」



「本当！？」



　急に目を輝かせ、ぱぁっと表情が明るくなったヒロインにレノは思わず笑う。




「ゲンキンな奴だな。でも、ここより寒いから覚悟しとけよ」



「レノがあっためてくれるから大丈夫」




　ね？と、ヒロインが可愛らしく片目を瞑った。




　下から上目遣いで覗き込まれたら、願いを叶えないわけにはいかない。



　安請け合いしたものの、内心はどうやって使いきった有給を取るか必死で考えていたレノであった。



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