時計の針が５時を指した。




「お疲れさん、と」



　レノは終業時間になると同時に席を立った。



　携帯を片手に素早くメールを打って送信する。




「レノ、仕事は終わったのか？」



　オフィスを出かかったレノをツォンが呼び止めた。



　暗に『終わってないのだから、席に戻れ』という圧力が込められていたが、レノは振り返ると勝ち誇ったように笑った。




「終わりましたよ、全部」


　そう言うと、レノは自分のデスクを指差した。



　レノのデスクを確認したツォンが目を丸くした。




「じゃ、俺は帰りますんで」



　にっと笑うと、レノは颯爽とオフィスを後にした。






「あのレノが定時に仕事を終わらせるとは…何もなければいいが…」



　と、ツォンが心配そうに窓の外に目を遣った。






　外はすっかり日が暮れ、夕闇がゆっくりと空を覆い始めていた。



.