ヒロインが到着すると、レノは壁に寄り掛かっていた。



「あ…すみません。遅くなりました」



　レノもヒロインに気付き、笑いかけた。



「思ったより早かったな。さすがだぞ、と」




　ヒロインは慌ててレノに駆け寄り、頭を下げた。



　途端に吐き気を催し、うっと呻き声を出してしまったが、口元を押さえ、上ってきた胃液を無理矢理飲み下した。




「おい、ヒロイン。やっぱり調子悪いんじゃ…」


「いえ、大丈夫です。任務に支障はありません。さ、終わらせましょう」



　ここまで来てレノに迷惑は掛けられないという意地から、ヒロインは心配するレノを遮った。



　レノは複雑な顔をして頭を掻いていた。











　中央ホールに踏み込んだ二人は、あっという間にボスの身柄を拘束し任務を終えた。



「任務完了。よくやったぞ、と」



「ありがとうございます」



　振り返ったレノが笑顔だったのにヒロインは胸を撫で下ろした。



（レノ先輩に迷惑掛けなくてよかった…）



　ほっとしたのも束の間。



　緊張が解けると今まで誤魔化してきた嘔吐感がヒロインを襲った。



　顔をしかめ、手で口を覆う。




「ヒロイン、どうした？」




　急に青白い顔をして身体を折ったヒロインに気付き、レノが近寄ってきた。




　レノが心配そうに見ているのはわかっていたが、その場に立っていることもできず、しゃがみこんだヒロインは堪らずその場に吐瀉した。



　立ち上がることもできず、冷や汗が身体を伝う。




「ヒロイン！」




　レノの呼ぶ声が遠退いていき、ヒロインは意識を失った。



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