「ルードとイリーナから聞いてるぞ。なかなか仕事できるってな」


「はぁ…」


「戦闘の筋もいいらしいな」


「まぁ…」


「今日もヒロインに任せておけば安心だな、と」


「……」




　移動の間レノが何度も話し掛けてきたが、ヒロインにはその全てがプレッシャーにしか感じられなかった。



――足手纏いの新人の面倒は見ない。




　最初にそう言い放ったレノが思い出され、ヒロインの胃が痛む。




　横でレノは余裕綽々とタバコを吸っているのに対し、ヒロインは顔を伏せていた。




（どうしようどうしよう…）



　だんだんと高まる緊張にヒロインの口数は減り、レノも話し掛けてこなくなった。







「ヒロインは右から、俺は左から侵入。敵を倒しながら、中央のホール前で合流、ボスを捕らえて任務完了だぞ、と」



　現地に到着すると、レノが地図を広げて作戦の説明をする。



　しかし、それすらもヒロインの頭に入らない。




　失敗しないように。


　バカにされないように。



　それだけを頭で何回も繰り返し、ヒロインは任務に就いた。








　レノと別れて一人になると、ヒロインは落ち着きを取り戻した。



　吐き気はするが、任務に支障はないだろうと判断し、ヒロインは敵の基地を進む。



　サイレンサーを付けた銃で一人一人確実に仕留めていく。




（中央ホール前で合流…）



　またレノと会わなければならない。



　ヒロインは再びキリキリ痛みだした胃を押さえて先を急いだ。



.