そんなある日。



　ヒロインを不幸な出来事が襲った。




「ヒロイン、任務だ。今日はレノと組んでくれ」



　朝、そうツォンから告げられた瞬間、ヒロインは目の前が暗くなるのを感じた。



　配属から半年。


　何故か上手い具合にレノと任務が被ることはなく、平穏無事に過ごしていたヒロインの日常が脆くも崩れ去る。




「よろしくな、ヒロインちゃん」



　ぽんぽんと軽くヒロインの頭を叩き、レノは不敵に笑った。



　そのレノの一挙手一投足が、自分をバカにしているように感じて、ヒロインは絶望的な面持ちで午前を過ごした。





　昼食も溜息ばかりが出て、食事が喉を通らない。




（レノ先輩と任務だなんて…）




　今日は失敗できない、失敗などしようものなら、どんなことを言われるかわからない。



　そんなプレッシャーがますますヒロインを追い詰める。




（あー、お腹痛くなってきた…）



　緊張から来る体調不良に、ヒロインはますます塞ぎ込んだ。









　出発時間になり、レノがデスクに向かうヒロインを迎えにきた。



「おーい、もう行くぞ、と……ちょっ、お前顔色悪いぞ。大丈夫か？」



　レノが大きく目を見開いている。




（あー、私そんなにひどい顔してんのかな…）



　確かにお腹が痛かったり、気持ち悪かったりしているが、全て精神的なものなのでどうしようもない。



　ヒロインは無理矢理笑みを浮かべて立ち上がった。




「だ、大丈夫ですから…さ、行きましょう」



　ヒロインはレノの訝しむような視線を避け、自ら先頭に立ってオフィスを出た。



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