本当に一瞬の出来事だった。





　レノは手にしたロッドで男たちを殴り倒していった。



　まさに電光石火とはこのこと。



　何人もいた男たちは、気が付けばリーダー格の男を残して全員倒れた。





　たぶん、死んでいるんだと思う。



　でも、少しも怖くなかった。





　私には、レノが私を助けにきた白馬に乗った王子様にしか見えてなかった。







「さて、年貢の納め時だぞ、と」




　レノはそう言うと、男の方へ一歩踏み出した。





　突然、成り行きを見守っていた私の身体が浮いた。



　わけがわからないまま、気が付けば男が私を羽交い締めにし、私を自分の盾にしていた。




「来るな！これ以上近づけば女を殺す！」






　ええ！？





　思ってもみなかった展開に、私はパニックになる。




「ちょっと！放して！」




　必死に藻掻いてみたが、男の腕がよりきつく絞まるだけで身動きがとれない。




　レノが一歩二歩と、こらちらに近づいてきた。




　私はぎょっとして、レノに向かって叫ぶ。



「ちょっと！あなたがこっち来たら、私殺されるのよ！？」




「だから？」



　レノは顔色一つ変えず、平然と言った。




　さぁーっと血の気が引いていく。




　全然、白馬の王子様じゃない！




　私の人生って、結局ここまでだったのね…





　全てに絶望して、私は抵抗を止めた。




　男が無抵抗の私を引きずり後退する。



「本当にこれ以上近づくなよ…！女が死ぬぞ！」




　男は腕に力を込めた。




　私の首が絞まる。





　バカね。



　私の命なんか盾にしても、結局あんた殺されるのよ。






　目を開けているのも辛くなり、私は静かに目を閉じた。



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