夢小説 狗巻棘
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狗巻んちの風呂が壊れた。山から持ってきてる配管が積雪で潰れたらしい。最寄りの銭湯は白雪の彼方に位置しているが、特に誰のせいでもない不運である。さみーさみーとぼやきながら銭湯を目指す。背中を丸める私とは対照的に、同行する狗巻はらんらんと目を輝かせている。ガキはみな雪が好きだ。小学生なら尚更のこと。旧家街のだだっ広い歩道を、ちょこまかと銀髪が動き回る。5分の道を15分くらいかけて。「早く行こーぜ」手を握って誘導すると少しはマシになったが、いかんせんコンパスが違う。歩幅を縮めてゆっくり歩く。視界の右端では銀頭がちまちま動き、時折止まった。見れば、雪に埋もれた花を救出したり、自分より一回り大きい私の足跡の上に、ちょいと足を置いて、その大きさの違いを楽しんでいたりする。「これ永遠に着かんぞ」「しゃけ」「しゃけじゃねーよ」リンゴのように赤らんだ鼻をちょんとこずく。「バス止まったからお前んち泊まるんだぞ、風呂入れなきゃ困るんだよ」「しゃけ」「話聞いてる?」むくむくと着膨れた体をくすくすと揺らして、やつは道の端の花の救出にあたった。鼻声がふんふん歌っているのは、流行ってるcmソングだろうか。日が暮れることを覚悟しながら「上手いじゃん」とまだ青い空を見上げて言う。ポケットのなかの小さな手がだんだんと湿りゆく冬。