夢小説 狗巻棘
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あんたディズニーランド行ったことある? と聞いてきたのはさっきまで戦っていた呪詛師だ。まだ息があったのか、と私は身構えるが、呪詛師は仰向けに倒れた姿勢のまま話を続けた。俺はこの前初めて行ってな、家が四国なもんで偉く旅費がかかったんだが、それでもあんたとやることになるって分かってたからよ、一回くらいディズニーきめとくかって思って。男が話すたびに左胸に刺さった短刀の柄がカタカタと揺れた。死にかけのくせによく喋る男だった。つらつらとした語りが秋晴れの澄んだ空気に溶けていく。現地で女子大生を引っ掛けたこと、奮発したホテルのこと、パレードの横で仲間と騒いだこと、その他全てに努めても夢の国を心から楽しいと思えなかったこと。浅い息とともに呪詛師は話した。ディズニー行ったら人生変わるとか言うやつもいるが、要はそいつの気の持ちようなんだろうな、今まで散々馬鹿やってきたのに、俺は今更、何を期待してたんだろう。そうして奴はぜろぜろと咳き込んだ。頭を横に傾けてやると青い口の端から泥のような血が流れ落ちた。私も、中学の時行ったけど、拍子抜けしたぜ。本音で話すと呪詛師の口角がわずかに上がる。奴はふー、と長い息を吐き、そのまま事きれた。乾いた風が脇を通り過ぎていった。私はすこし迷った挙句、遺体を街路樹の下に移動させた。
高専へ戻ると石畳に狗巻が立っていた。任務が予定より早く終わったので私を待っていたらしい。さむそうなかお、と呟いた狗巻は私の手を取って、口元へ持っていくと、はー、と息を吐いた。ぬくい手を振り払うこともできずに、私は途方もなく申し訳ない気持ちになる。あの男へ話したことは決して嘘ではなかったんだが。
高専へ戻ると石畳に狗巻が立っていた。任務が予定より早く終わったので私を待っていたらしい。さむそうなかお、と呟いた狗巻は私の手を取って、口元へ持っていくと、はー、と息を吐いた。ぬくい手を振り払うこともできずに、私は途方もなく申し訳ない気持ちになる。あの男へ話したことは決して嘘ではなかったんだが。