夢小説 狗巻棘
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依頼人の庭が見事だった。どのような仕掛けが施されているのか、四季折々の花が咲き乱れている。古い日本家屋から続く藤のトンネルをくぐれば朝顔の生垣があらわれ、庭園の中央に広がる池の周りには菖蒲や文目がすいすいと伸びていた。庭園からうかがえるのは依頼人の莫大な資産と色彩への異様なこだわりである。人となりも偏執していたため、私達は依頼の呪物を納めてそうそうに屋敷をあとにした。
池をぐるりと迂回した先にはひときわ大きな紫木蓮の巨木が腰をおろしていた。両腕を天に掲げるように枝を伸ばすさまは、このおとぎ話のような庭のなかにあってもいっそう現実離れした風景だった。咲きほこる花弁は正午の強い日光に照らされ、地面に重たげな影を落としている。普通に見れば赤紫色の外花が美しいのだろうが、地面に膝をついて狗巻のものを咥える私は自然と空を仰ぎ見る姿勢になっており、その鮮やかな彩りは確認できなかった。木蓮の花影は、幹に半身を預ける狗巻が腰を揺らすたびに小刻みに揺れた。緩慢なピストン運動は延々と続いた。私が咳き込むと動きはすこしゆるんだが、冷淡に伏せられた狗巻の瞳が和らぐことはなかった。舌を使うことは許されなかったので、私ができることといえば、口端からあふれる唾液を時折すすることだけだ。そのため狗巻のものが芯をもちきるにはそれなりの時間を要した。やがて長い、長い吐精とともに種が口内にそそがれる。へばりつく種を飲みくだすあいだ、狗巻は人の口に性器を突っ込んだまま、おいしい? と馬鹿なことを言った。狗巻の声は質問のていをなしておらず、独り言のようだった。声色の静けさに反して、狗巻は私の頭の両脇を強く掴んでおり、首を横に振ることは叶わなかった。もちろん美味いわけがないので、私は頷くこともない。黙っていると、あのひとのより、とゆっくりと狗巻の唇が言葉をかたちどる。言い終えないうちに紫色の瞳がゆらゆら、ゆらゆらと揺れて、私の顔にぱたぱたと雫を降らした。瞳の色とは異なる透明な雫を。そうして狗巻は私の頭から手を離し、私の口から出て行った。解放と同時にそのまま地面に押し倒される。塞がれた口からは変に甘い味がした。
紫に着色された産土に押しつけられながら、依頼人の屋敷方面を見やる。開け放たれた窓辺には菫色の双眼鏡が置かれていた。この庭園は邸宅を取り囲むようにのの字をえがいて設計されており、客がどこにいても視認できるそうだ。しかし窓辺に人影は見えなかった。先ほどまでのまとわりつくような視線もない。興味が失せたのだろう。ほっと息をつく間もなく下衣がずらされ、ぬるついたものが擦り付けられる。生でやられそうになったら本気で抵抗しようと咄嗟に思うが、狗巻は私の腹や下生えを汚すばかりで、それ以上侵入してくることはなかった。薬を盛られてもこういったモラルをギリギリで守るのが狗巻らしいと思った。
小さな頭を持ち上げてやると、その並はずれた瞳と目が合う。濡れたまつ毛で縁取られたそこは深い悲しみをたたえていた。
私とのありもしない関係を仄めかした依頼人は、終始俯く狗巻の目ばかり見ていた。まるで芸術品でも鑑賞するかのように。依頼人の審美眼はきっと正しい。正しいのだろうけど。不快感を振り払うように狗巻の頭を私は抱く。あんなの信じるなんて馬鹿じゃねえの、と耳に口をつけて弁明するが、すすり泣きすら押し殺す狗巻の返答はなかった。横の地面をはたはたと雫が濡らす音だけが聞こえた。私は地べたに横たわったまま、あーあーとため息をつく。そして盛りの花々を下から見上げる。依頼人があんな野郎じゃなきゃ、今頃こいつと同じ色の花を2人で見れたはずなのに。当てがはずれた私はしょげた背中を撫でさすり、不憫なそいつの薬がきれるのを待つ。嫉妬と後悔が甘く香る、紫木蓮の木の下で。
池をぐるりと迂回した先にはひときわ大きな紫木蓮の巨木が腰をおろしていた。両腕を天に掲げるように枝を伸ばすさまは、このおとぎ話のような庭のなかにあってもいっそう現実離れした風景だった。咲きほこる花弁は正午の強い日光に照らされ、地面に重たげな影を落としている。普通に見れば赤紫色の外花が美しいのだろうが、地面に膝をついて狗巻のものを咥える私は自然と空を仰ぎ見る姿勢になっており、その鮮やかな彩りは確認できなかった。木蓮の花影は、幹に半身を預ける狗巻が腰を揺らすたびに小刻みに揺れた。緩慢なピストン運動は延々と続いた。私が咳き込むと動きはすこしゆるんだが、冷淡に伏せられた狗巻の瞳が和らぐことはなかった。舌を使うことは許されなかったので、私ができることといえば、口端からあふれる唾液を時折すすることだけだ。そのため狗巻のものが芯をもちきるにはそれなりの時間を要した。やがて長い、長い吐精とともに種が口内にそそがれる。へばりつく種を飲みくだすあいだ、狗巻は人の口に性器を突っ込んだまま、おいしい? と馬鹿なことを言った。狗巻の声は質問のていをなしておらず、独り言のようだった。声色の静けさに反して、狗巻は私の頭の両脇を強く掴んでおり、首を横に振ることは叶わなかった。もちろん美味いわけがないので、私は頷くこともない。黙っていると、あのひとのより、とゆっくりと狗巻の唇が言葉をかたちどる。言い終えないうちに紫色の瞳がゆらゆら、ゆらゆらと揺れて、私の顔にぱたぱたと雫を降らした。瞳の色とは異なる透明な雫を。そうして狗巻は私の頭から手を離し、私の口から出て行った。解放と同時にそのまま地面に押し倒される。塞がれた口からは変に甘い味がした。
紫に着色された産土に押しつけられながら、依頼人の屋敷方面を見やる。開け放たれた窓辺には菫色の双眼鏡が置かれていた。この庭園は邸宅を取り囲むようにのの字をえがいて設計されており、客がどこにいても視認できるそうだ。しかし窓辺に人影は見えなかった。先ほどまでのまとわりつくような視線もない。興味が失せたのだろう。ほっと息をつく間もなく下衣がずらされ、ぬるついたものが擦り付けられる。生でやられそうになったら本気で抵抗しようと咄嗟に思うが、狗巻は私の腹や下生えを汚すばかりで、それ以上侵入してくることはなかった。薬を盛られてもこういったモラルをギリギリで守るのが狗巻らしいと思った。
小さな頭を持ち上げてやると、その並はずれた瞳と目が合う。濡れたまつ毛で縁取られたそこは深い悲しみをたたえていた。
私とのありもしない関係を仄めかした依頼人は、終始俯く狗巻の目ばかり見ていた。まるで芸術品でも鑑賞するかのように。依頼人の審美眼はきっと正しい。正しいのだろうけど。不快感を振り払うように狗巻の頭を私は抱く。あんなの信じるなんて馬鹿じゃねえの、と耳に口をつけて弁明するが、すすり泣きすら押し殺す狗巻の返答はなかった。横の地面をはたはたと雫が濡らす音だけが聞こえた。私は地べたに横たわったまま、あーあーとため息をつく。そして盛りの花々を下から見上げる。依頼人があんな野郎じゃなきゃ、今頃こいつと同じ色の花を2人で見れたはずなのに。当てがはずれた私はしょげた背中を撫でさすり、不憫なそいつの薬がきれるのを待つ。嫉妬と後悔が甘く香る、紫木蓮の木の下で。