最上と茂夫
汗がまつげについていたので、と茂夫は言った。仰向けの姿勢のまま腕を伸ばし、最上の頭を引き寄せてまぶたに口付けた。まるで花でもついばむように。発汗を再現していない日に限ってそんなことを言う茂夫に、最上は名状しがたい衝動を感じた。結果として茂夫はさらさらとした精を中心から垂れ流すだけになる。体液にまみれた茂夫の体を風呂場まで運び、湯で清める。酷使した臀部を洗う際にまぶたがわずかに震えたが、目を覚ますことはなかった。男二人が入る浴槽はとても窮屈だ。最上の体に茂夫の体が隙間なく沿う。最上は壁に頭をもたれ、こちらに体をあずける茂夫のたしかな重みに集中する。今日に限って一度も拒むことのなかった彼の胸の内を想像しながら。もくもくと立ちこめる湯気が少年の白い頬にあたってはくだけた。そのうち一方が一方に習い、そのまぶたに唇を寄せる。悪霊は懺悔している。無理をさせてすまない。優しさに甘えてすまない。満足に会いに来てやれずすまない。いつまでもキミを手放せそうになくて本当にすまない。