最上と茂夫
お風呂から上がって布団に入ろうとしたら、先に入ってた人に止められた。髪乾かせってことかと思ったけど違うらしい。毛布をかぶったまま、地を這うような声で小出しに情報を出してくる。あれだ、このまえかった…あおの、ふかふかの。最後の言葉で思い当たったぼくは、タンスの服をあれこれ引っ張りだし、ひとつに袖を通す。布団に潜りこめばニュッと伸びた腕にまさぐられた。腰より下に手が伸びてこないあたり本格的に疲れているんだろう。あーと仕事あがりのビールみたいな息をはいて、ぼくの背中を何度も確かめるように最上さんは撫で回した。眉間に寄ったしわを伸ばしてあげるとゔゔと唸り、胸に頭を擦り付けてくる。甘えられているようでたまらない。たとえ上着の感触を気に入っているだけだとしても。明日あんたの分のふかふか買ってきますからねっ、とぼさついた頭をぎゅうぎゅう抱きしめながらぼくは言う。ちなみにフリースって名前は内緒。