最上と茂夫
性交に対して特段何を思うわけでもないのだが、影山くんにとってはそうではないらしい。顔が見たいと言って正常位をねだり、特別さを滲ませた視線を送ってくる。彼のこういった態度にはほとほと困る。若いので仕方ないが。最近では、初めの頃と比べて余裕が出てきたようで、ますます態度が悪化している。顔の横に腕をつけば、その腕にじゃれてくる。平たい胸を吸えば、私の頭に口付けてくるのだ。もちろん前戯に限った話ではない。穴に棒を突っ込んで揺すっている時でもこんな調子である。すこし前までされるがままだったというのに。これでは行為に集中しずらい。邪魔でかなわんので、口は口で、手は手でもって塞いでやる。無論穴は棒で埋める。埋めた箇所が馴染むのを待つ。すると影山くんは私の頰を包み、私のことが好きだと息を吐く。これだけは初めの頃と変わらない。初めて抱いたその日から彼は同じことを言うのだ。変わったのは、影山くんが私に返事を求めるようになった点である。もがみさんは。もがみさんはぼくのことどう思ってますか。返答のしようがない。理解者になれば教えてやる。そう返せば、そんなかおしたらばればれですよ、と影山くんは嬉しそうに言う。何がバレバレなのか全く意味が分からない。そしてなんとなく腹立たしい。顔を見られるのが耐え難く感じられ、抱き寄せて視線を切る。てれてる、だのなんだの、またもうるさいから、腰を動かして口の聞けない状態にする。そうして互いの表面の多くを重ねた私たちは、はたから見れば愛し合っている二人にも見えよう。もしそれが真実であっても致し方ないことだ。彼が私に与えるので、あふれた分を私は彼に返している。行き交うそれらが繰り返し続けば、始まりも終わりも分からなくなるだろう。永遠と謳われるそれに近づいていくのだろう。