最上と茂夫
夢の中で影山くんが死んでいた。こういった悪夢はよく見る。同化しきれていない悪霊たちのしわざかもしれない。赤黒い泥地が地平線まで広がり、死体が無数に転がっている。ざっと調べた限りでは母の姿は見られなかった。死体の検分をやめて影山くんの元に戻れば、まだ死んでいなかったらしい。泥に濡れたまぶたがわずかに開く。膝をついて顔を近づけると、約束を守れなくてすみません、と細い声が聞こえた。生きている間に私を成仏させるという困難な望みを現実の彼はよく口にするのだ。約束とはそのことであろう。気にするな、はなから期待していない。そう返せば、ふ、と息だけで彼は笑った。腕がこちらに伸び、冷えた指先が私の耳殻をついとなぞり、だらんと落ちる。動かなくなった彼の体はかたくなで、死体というより石のようであった。くたびれていたので、影山くんの形をした石の横に私は寝そべる。石の顔を眺めたり、石の手を握ったりしながら。そのうちに予想より大きな喪失感を負っている自分に気付き、男はすこし驚く。心臓をしずかに抜き取られたらこんな心地になるはずだ。