最上と茂夫
きみが死んだらきみの霊素を取り込んであの世のどこにも行けなくする。できるわけないって思うか? 平均寿命まで六十年以上あるんだ。それまでにありったけの亡者を蓄えておけばきっと不可能じゃない。死ぬときにはきみの中身にあるそれも衰えているだろうから、予想よりずっと簡単かもしれないな。退屈はさせないよ。精神世界の奥に閉じ込めて朝昼晩関係なくもてなしてあげる。永久に私のものだ。何があっても逃さない。たとえきみがおかしくなって、私を怨んだと、しても。吐き出された呪詛に身をおこした茂夫は、色の無い唇を自分のものとうすく重ねる。かたくなな拳はやわく包んで手のひらでなぜる。すさまじい耳鳴りに眉をひそめながら、それでも少年は悪霊の冷たい舌と指のどちらかが絡んでくるのを辛抱強く待つのである。もつれた糸をほぐすのには時間がかかるから。
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