雄英高校
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クリスマス
寮のロビーでのクリスマス会は無事に終わり
障子は自室にいた
必要最低限の物だけが揃った部屋に
今日使ったサンタ帽子と交換で得たプレゼントが加わる
束の間の楽しみ
学生らしい思い出に思わず彼は笑った
その時、コンコンっとドアを叩く音がした
「障子くん。私……○○です」
ドア腰には聞き慣れたクラスメートの声
彼は扉を開けて彼女を部屋に通した
狐個性持ち主の彼女は、フワッとした尻尾を左右に振り、獣型をした耳をピクピクと動かしている
それは彼女が緊張している時の癖である事を障子は知っていた
「夜遅くにすみません」
「何かあったのか?」
「いや、大した事じゃないんだけど……これ
」
彼女はそう言うと小さな紙袋と紙切れを彼の前に差し出した
「今日……クリスマスだから……障子君にどうしても渡したくて……」
歯切れ悪く話す彼女は俯く
彼は彼女の脳天を見下ろしていた
「USJとか林間学校とか、色々庇って貰ってたのに、お礼がなかなか言えなくて……」
幾度か受けたヴィランからの襲撃
その中で彼は何度か彼女を庇った
「俺は出来る事をしただけだから、気にしないでくれ」
「でも、私のせいでケガしたり……守ってもらってばっかりで申し訳なくて……」
「ヒーロー志望なんだから、ケガの一つや二つ大したことないぞ」
「私がイヤなの!
みんながキズつくのも!
障子くんがケガするのも……」
「……」
「これからは、お礼とかしなくて良いように訓練頑張るし……守ってもらうなんて事……もうないようにするから……」
だんだん小さくなる声
シュンと垂れる尻尾と耳
(落ち込まないで欲しい……あんなの俺の自己満足に過ぎないのだから……)
危険から彼女を守ったのは、単純に傷付けたくなかったから
そして彼女が自分以外のヤツに守られる姿を見るくらいなら……
そんな不純な動機で動いただけだった
(独り占めしたいとか……そんな資格が俺にあるわけではないが……)
自分の手が届く範囲であるから彼女を守りたい
それはヒーロー志望だからと言うよりは
彼女に惹かれているから
その事に彼自身自覚もある
「遠慮なく貰っておく。ありがとう」
"○○が好きで守ってるから貰えない"
そんなストレートな言葉を発することは出来ず、
彼は差出された紙袋を受け取った
彼の言葉に彼女は見慣れた明るい笑顔を向ける
垂れていた尻尾は勢いよく左右に揺れる
「これね、クッキー
昨日、佐藤くんに教えてもらって作ったの」
「佐藤と……二人で?」
「ううん、お茶子ちゃんや他の女の子といっしょだよ。
みんなそれぞれに礼渡したい人がいるんだって」
彼女の口から佐藤の名前が出た時胸がざわついた
貰うと言ったものの、二人で仲良く作ったのならいらないと捨てたくなった
「障子くん……クッキー嫌い?」
「いや、そんなことはない。有り難く頂く」
「良かった」
受け取った紙袋付けられた紙切れに気付く
「これは?」
彼はその紙切れを手に取り見つめる
"欲しいものあげます券"
小さな狐のイラストのある紙には丸い文字でそう書かれていた
「"欲しいものあげます券"!
障子くんの欲しいものが分からなくて……
ほら!障子くんミニマリストだし、必要ない物増やすと邪魔かなって……」
「……」
目の前で笑う彼女
そんな無邪気な笑顔を向けないで欲しいと彼は思った
(欲しいのなんて○○に決まっている……)
こんなチケット一枚で手に入れて良いのか
いや、そんな気がないからこんなチケットを用意したのか
その辺りは検討もつかない
ただ、目の前に人参をさげられて飛びつかない馬はいない
彼だってまたとないチャンスを逃すほどノロマではない
「だから、何か欲しい物決まったら教えて!
凄いものはムリだけど、いらないものより、いるものあげたいし」
「本当に何でもいいのか?」
「うん。出来る範囲なら」
「今、すぐ使ってもいいか?」
「えっ!障子くん欲しいものあったの!?
早く聞けば良かったね」
言って、言って!
そう彼女が耳をピンとたてる
その耳に彼は顔を近づけ囁く
「○○が欲しい」
「えっ?」
「○○に側にいて欲しいと言うのも有効か?」
「えっと……それは……」
「好きだから……一緒にいたいって意味で」
彼女が目を丸くして距離を取ろうとしたのが分かった
でも、今ここで離れて欲しくないと言う彼の無意識が働く
彼は彼女を包み込むように抱き締めた
腕の中で彼女が固まっている
動きを止めている尻尾の毛が逆立っているのが分かった
自分らしくない、猪突猛進な事をしていると頭の冷静な部分で理解している
ただ、今手の届いてしまった、この愛しい彼女を自分から手放す事は出来なかった
「……イヤなら突き飛ばしてくれ手構わない」
「……」
「昔から物欲はなかったんだ。
ただ、執着がなくて………」
マスクと肌の境目にある彼女の耳がピクっと動く
尻尾より少し短く硬い毛は、肌に当たると少しくすぐったい
「でも○○は違う。
この気持ちを自覚してからは……手に入れたくて仕方がなかった」
「障子くん……」
「好きだ」
「私……必要?」
「あぁ……必要不可欠だ」
「そっかぁ……」
彼の言葉に彼女の尻尾が揺れだす
少し距離のあった体が、ぴったりくっついて彼の体に体重をかける
「ねぇ、障子くん」
「なんだ?」
「イヤだったら、突き飛ばしてね」
顔を上げた彼女は、そっと彼のマスクに手をかける
そしてマスクを下ろすと彼に唇を重ねた
「!?」
「私も障子くん大好きなの」
「……」
「欲しいのは私だけにしてね」
驚きで赤面する彼に再び彼女は強く抱きつく
狐の個性が消失したかと思うほど
犬のように尻尾を振り、猫のようにすり寄った
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