稲荷崎高校
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平日の昼下り
『おにぎり宮』のカウンターには少し遅い昼食を食べる○○が座る
「○○ちゃん、今回は何日の出張になるん?」
休憩中の治は、隣に座りおにぎりを頬張る○○に話しかけた
「今日から一週間………で終わらせたいです」
"私の力量したいですね"そう付け加える彼女は、へらっと情けなく笑う
その顔に彼は微笑む
○○と治の出会いは、半年ほど前だった
正確に数えると彼女は、あの烏野高校のマネージャーをしていたらしいのでもっと前になるが、
春高の会場に彼女がいたか、いないかなんて彼は覚えていなかった
ただ、半年前のあの日
買い出しの途中でぶつかった時
"宮治さんですよね。稲荷崎の!"
そう言われたのは今でもはっきりと覚えていた
(我ながらチョロかったわ……)
あの時、侑の名前ではなくちゃんと名前を呼ばれた事が妙に嬉しかった
宮兄弟でも、侑の弟でもなく"治"と言う自分の名前を呼ばれた事が嬉しかった
どんなにそっくりの双子でも、人間は別
一即夛にされる事自体イヤだが、その時自分が侑のオマケみたいな扱いをされるのは特にイヤだった
「治さん、これ新作ですか?
スッゴイ美味しいです」
彼女のキラキラした目が治を見る
(なんでこんな可愛い子、高校ん時に捕まえとかんかったんやろ)
まだ着慣れてないスーツに、緩やかな輪郭の幼い顔
会えば会うほど、彼女の可愛さを独り占めしたくなる
「新作ってよりは、試作や。
ゆっくり食べて感想教えてや」
「試作品なんて、私が食べて良かったんですか!?」
「出張の度にご贔屓してもらっとるお礼や」
「そんな!
私は治さんのおにぎりが大好きなだけで!」
"大好き"その主語を自分の名前と置き換えたくなる
おにぎりを食べる姿も焦る姿も、何をしていても可愛くて仕方ない
「出張来ると夜は接待ばっかりなんです。
色々終わってホテル帰るぞーって時、実はいつも治さんのおにぎり食べたくなるんです」
「………」
「でも、お店閉まってるし、コンビニで買うんですけど、食べてみると思うんです
治さんのおにぎり食べたいなぁーって」
「なぁ、○○ちゃん」
「はい?」
「夜でも何でも、俺んとこ来たらいいやん」
「へ?」
「食べるんなら、俺のんだけ食べてや」
「えっ、でも、本当に夜中ですし」
「それでもコンビニの代替えにされるとか、浮気されてるみたいでイヤやわ」
彼は彼女の手に自分の手を重ねた
いつもおにぎりを掴むその手にずっと触れてみたいと思っていた
触れてみたいと思っていたその手は想像以上に小さくて、こどもみたいに温かい
「今夜も接待?」
「えっ、はい」
手に触れられ驚く彼女の声は少し上擦る
「ほんなら、迎えにいってもいい?」
「いや、でも、本当に遅くなるし、いつ終わるか分からないし」
「俺は迷惑ちゃうで」
重ねた手を上から優しく撫でる
嫌がられない事に安心と嬉しさが込み上げる
されるがままの指に自分の指を絡ませ、恋人繋を作る
「今夜はホテルやなくて、俺んとこ泊まらん?」
「!?」
「○○ちゃんおにぎり食べれるし、俺は浮気されんで済むし。
お互いに得やん」
「いや、でも、その……
治さんトコに夜な夜ななんて……彼女さんに申し訳なくて」
「なぁ、○○ちゃん。
その彼女に○○ちゃんがなってや」
「へ?」
彼の言葉に彼女は間抜けな声を上げる
そして次にはカーっと頬を赤く染める
その姿は見ていて面白く、彼は思わず吹き出す
そんな彼を彼女はポカポカと叩き、ムスッとした顔になる
その顔を見て彼は優しく笑う
「そんで明日の朝○○ちゃんが味噌汁を作ってや。
何の具でもええから。
俺はおにぎり作るから」
彼はそう言うと幸せそうに笑い、繋いだ手に力を込める
「そしたら二人で食べよう」
毎日のおにぎりに温かい味噌汁を添えて
それを向かい合って二人で食べたい
そんな朝をこれから迎えたい
「○○ちゃんが、好きや」
彼の言葉に答えるように彼女は繋いだ手を強く握り返した
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