音駒高校
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
午後の練習が始まる前
福永は烏野高校マネージャーの○○と対峙していた
複数校合同で行われる夏合宿
マネージャーは研修を兼ねて他校のマネージャーとトレードしたりする
本日○○は音駒高校のマネージャーを1日務める
「福永さん!」
小さくて見た目もまだ幼い
そんな○○の見た目にぴったりの明るく元気な声が彼の名を呼ぶ
「……………」
一方、福永はいつもの事ながら口を開かない
彼女の呼びかけに気付いていない訳ではないので、顔はしっかりと彼女を向いている
「研磨さん通してじゃなくて、ちゃんと私と話してください」
彼女は訴える様な瞳と表情を向ける
午前中の練習
彼女が彼に何を話しかけても、彼は無口
チームメイトを通して話をするか、首を振ったり頷いたりして反応するだけである
音駒のチームメイトからすれば、彼が口を開かない事は日々の事であり気にはならない
しかし、他校の生徒からすれば気になってしまうのだと彼は今更ながらに気が付いた
「福永さん、私の事嫌いですか?」
ぐっと彼女の顔が近づく
幼さを引き立てる大きな瞳は、少し泣き出しそうである
「…………」
"嫌いじゃないよ"そんな簡単な言葉が上手く口に出来ない
"好きだよ"いや、それはなんか行き過ぎな気がする
ちっちゃくて、ちょこちょこしてて、可愛いとは思うけど
色々考え出すと余計に言葉は口から出ようとはしない
その時
彼のオデコに何かがぶつかる
(………何?)
考えただけ
それを、何か確認する前に、今度は鼻先に不思議な感触を感じる
「!?」
事態を把握した彼は体をピーンと固くする
そして次第に顔面が熱くなる
彼女のオデコと鼻先が彼のオデコと鼻先にちょんっとくっついている
「猫って、鼻と鼻をくっつけると相手の気持ちが分かるらしいんです」
至近距離で話す彼女の唇をが、彼の唇をかすれていきそうな距離
体は固くなっているのに、心臓は聞いたことがないくらいの速さで脈打つ
「こうしたら福永さんの考えてること分かりますか」
(いや! 絶対に分からないよ!)
思わず心の中でツッコむ
「午後のドリンクは、水ですか? スポドリですか?」
「スポドリ!!」
彼は彼女の肩を持ち、体を引き離して言う
その声は体育館中に響いた
「猫式コミュニケーション。成功ですね」
ニコッと本当に嬉しそうな笑顔を浮かべる彼女
彼はその笑顔に先程感じた温もりを思い出して赤面する
「午後のドリンク作ってきまーす!」
彼女はそう言って体育館を出て行った
「福永のそんな声、はじめて聞いた」
近くにいた孤爪と黒尾がニヤニヤと彼を見ていた
「……………」
福永は赤い顔を両手で覆い隠し俯く
「たしかに、こんな福永ははじめてだな」
「さすが、翔陽の幼馴染だよね」
「○○ちゃんはおチビちゃんの幼馴染なんだ」
「うん。家も隣。
産まれたの10分違うだけなんだって」
「そりゃぁ、マンガみたいだね」
「何か似てるよね。突拍子もないとこ」
「それより、福永大丈夫ですカ?」
黒尾の問いに福永は顔を両手で覆ったままいつもより大きく頷く
(猫式コミュニケーション…)
彼はまた思い出す
ちょっとした温もりの中、鼻先だけはちょっと冷たい
フワっとした香り
(次からはちゃんと喋ろう)
顔を覆う両手をゆっくり離す
最後に残る人差し指で、先程彼女がくっついていた鼻先に触れる
(でも、もしも……)
もしもまた彼女に触れたくなったら……
触れられてみたくなったら……
またちょっと無口なフリをしてみよう
顔を上げた彼は、とても嬉しそうに笑っていた