烏野高校
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保健室の先生
烏野高校女子バレー部のOG
男子バレー部副顧問
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「○○先生、いらっしゃいますか?」
午後の授業が始まる時間
武田は、男子バレー部副顧問の○○に用事があり保健室を訪れていた
「武田先生いらっしゃい」
窓際の机
イスに腰掛ける彼女は湯気の立つコーヒーカップを片手に持っていた
「部活の遠征日程等のお話があるのですが、お時間よろしいですか?」
「私は大丈夫ですよ。先生、次空きですか?」
「はい」
「じゃぁ、コーヒー入れますね」
彼女は立ち上がる
彼用のイスを用意して、コーヒーの準備
歩く度にその風で白衣がなびき、コツンコツンとヒールの音が響く
武田が用意されたイスに座るとフワっとコーヒーのいい香りが部屋に満ちる
「ブラックで大丈夫です?」
「はい。ありがとうございます」
「熱いから気をつけて下さい」
彼が差し出されたカップを受け取ると、彼女はニコりと笑う
その顔に彼は思わず見惚れた
身長170cm
痩せ型で中性的な顔立ちの彼女は、男性に間違えられることも少なくない
武田自身でさえ彼女がジャージで体育館に現れた時には男性と見間違えたくらいである
(キレイな人……ですよね)
色素の薄い髪
少し長いまつ毛
こんなにキレイな人を何で男性と間違えたのだろう……と彼女との付き合いが長くなるにつれて彼は思うのだった
「武田先生?」
彼女の声にはっと我に返る
「すみません。見惚れていました」
「私の顔、何かついてる?」
「いえ、その……キレイだなと思って……」
彼は言いながら自分の顔が熱くなるのが分かった
部活の話があっただけで、こんな事を話すつもりではなかったのだと彼はカップを握った
「ははっ。ありがとうね、先生。
褒め言葉として受け取っておきます」
○○はクスクスと笑い自分のコーヒーを一口飲んだ
その動作ひとつひとつもキラキラとしていた
「○○先生は、もう恋人は作らない……のですか?」
不意に溢れた言葉だった
彼女に見惚れるがあまり、キレイな笑顔を向けられていたがあまり、不意に溢れてしまった一言
25才の若さにして一度不慮の事故で恋人を亡くしている彼女は、今の問いかけをどんな気持ちで受け止めただろうか?
そう考えると彼は、強烈な鈍器で殴りつけたような気持ちになった
「……すみません」
武田先生が声を絞り出す
その様子を彼女は先程より苦くなった笑顔を浮かべながら見つめる
「いいですよ。武田先生。
"もう恋愛しないのか"って、周りにはよく言われますし」
コーヒーカップを置いた彼女は、机に肘を付き窓の外に視線を移す
どんな顔をしたら良いか分からない武田先生にとって、視線をはずしてくれたのは救いだった
「武田先生……」
彼女は窓の外から視線を外すことなく話かける
「私……忘れられなくて」
武田先生は何も言わずに彼女の話を聞いた
「いつもふとした瞬間に思い出すんです。
ふたりで行ったトコとか、話したこととか、約束とか……
アイツが死んでもう3年も経つのに何も忘れられないんです」
ガタッと音を立てて武田先生はイスを立つ
「忘れなくてもいいんじゃないでしょうか」
彼は真っ直ぐ彼女を見る
「いいんですよ。きっと。
忘れたくない事は忘れなくて
人間忘れなければならない事は、
きっと本能的に忘れるように出来てます。
忘れられないのだとしたらそれは……それはきっと、忘れなくても前に進んでいける記憶なんじゃないでしょうか」
彼女の視線に彼は我に返る
「すみませんっ!
何か、分かったような口をきいてっ!」
「いや、先生は詩人や哲学者みたいになんか心を突く事を言いますね」
「僕は詩人でも哲学者でもありません。
ただ、前に進んで欲しくて……
そして○○先生が前に進もうとした時、隣にいるのに僕を選んで欲しいだけで……
単なる下心なんです」
今まで単調だった彼女の表情が驚きに変わる
いつも飄々としている彼女の表情が、一瞬で変わるのは新鮮だった
「好きです。あなたの事が……」
真っ直ぐした、迷いの無い視線
普段の気が弱そうな彼が時折見せる強い視線は、真っすぐ強く、青年のような純粋な視線
「武田先生……私」
彼女がそう言いかけたところで、彼はいつもの様な優しい雰囲気に戻る
「あっ、いや、すみません……
なんか○○先生の気持ちに漬け込むような事して……
でも○○先生が好きなのは本当です!
信じて下さい」
彼は表情を隠すようにメガネに触れる
「○○先生に気持ちを伝えた事を後悔はしていません。
僕なりに惚れてもらえる努力はするつもりですので、
今後ともよろしくお願いします」
彼はそう言うと赤い顔で遠征のプリントを彼女に手渡した